国税庁、令和5事務年度の「相互協議の状況」を公表

現在、我が国では79の租税条約等(適用対象国・地域は86か国・地域)において、相互協議に関する規定が置かれており、国税庁では、移転価格課税等による国際的な二重課税について納税者の申立てを受けた場合、租税条約等の規定に基づき外国税務当局との相互協議を実施してその解決を図っている。また、納税者の予測可能性を高め、移転価格税制の適正・円滑な執行を図る観点から、事前確認に係る相互協議を実施している。
 
今回、国税庁から令和5事務年度における「相互協議の状況」が公表された。
相互協議事案の発生件数は212件であり、前事務年度と比較して70%に減少したが、そのうち、167件(79%)が事前確認に係るものとなっている。処理件数は219件、前事務年度に比べ115%の増加となり、事前確認に係るものは158件(72%)となっている。処理事案について、業種別内訳は製造業が約69%と最も多く、次いで卸売・小売業(約19%)となっている。
 
令和5事務年度末の繰越件数は前事務年度に比べ減少したものの735件あり、事前確認に係るものが595件(81%)となっている。繰越事案の相手国・地域の地域別内訳については、アジア・大洋州が最も多く、次いで米州、欧州・アフリカが続いている。具体的な国別では、米国が24%で最も多く、次いで中国(14%)、インド(14%)、韓国(8%)、ドイツ(5%)となっている。
 
OECD非加盟国・地域との相互協議事案については、発生件数が65件、処理件数は74件であり、繰越件数は326件となっている。この件数は、相互協議事案の繰越件数の44%に当たる。処理事案1件当たりに要した平均処理期間は、42.2か月、事前確認に係るものは63.5か月となっているが、処理事案全体での平均処理期間は、31.8か月、事前確認に係るものは35.8か月であることから、OECD非加盟国・地域との相互協議事案の処理は長期化の傾向にある。
 
事前確認は、納税者と税務当局が独立企業間価格の算定方法等について、事前に確認を行う制度であり、移転価格課税への対策として有効な手段であると考えられるが、その処理には時間を要することから事前確認を求める企業は長期的な視点で計画を立てる必要がある。
 
(参考)令和5事務年度の「相互協議の状況」について

https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2024/sogo_kyogi/sogo_kyogi.pdf