会計検査院 取引相場のない株式の評価方法で指摘

会計検査院は11月6日、「令和5年度決算検査報告の概要」を公表した。
この検査報告は、令和5年度の国の歳入歳出決算、政府関係機関の収入支出決算等について、会計検査院が令和6年次に実施した会計検査の成果を収録しており、内閣から決算とともに国会に提出されるものである。
 
令和5年度決算検査報告の特徴的な案件として、Ⅰ新型コロナウイルス感染症対策関係経費・物価高騰対策関係経費等に関するもの、Ⅱ社会保障に関するもの、Ⅲデジタルに関するもの、Ⅳ国民生活の安全性の確保に関するもの、Ⅴ制度・事業の効果等に関するもの、Ⅵ予算の適正な執行、会計経理の適正な処理等に関するもの、Ⅶ資産、基金等のストックに関するものがあげられており、Ⅴ制度・事業の効果等に関するものの中で「相続等により取得した財産のうち取引相場のない株式の評価」について指摘が行われた。
 
会計検査院では、令和2、3両年分の相続税及び贈与税の申告のうち、取得した財産に取引相場のない株式がある申告の中から、無作為抽出した計1,600件の申告を対象として検査を行い、原則的評価方式による評価(類似業種比準方式、純資産価額方式)の状況、特例的評価方式(配当還元方式)について分析を行った。
その結果、原則的評価方式による評価の状況については、異なる規模区分の評価会社が発行した取引相場のない株式を取得した者間で株式の評価の公平性が必ずしも確保されているとはいえないとし、特例的評価方式(配当還元方式)による評価の状況については、還元率が社会経済の変化に応じたものとなっておらず、近年の金利の水準と比べて相対的に高い率となっているおそれがあり、10%の還元率に基づいて算定される評価額は、通達制定当時と比べて相対的に低くなっているおそれがあるとした。
 
会計検査院は、この結果を受け、国税庁に対して、異なる規模区分の評価会社が発行した取引相場のない株式を取得した者間での株式の評価の公平性や社会経済の変化を考慮するなどして、評価制度の在り方について様々な視点からより適切なものとなるよう検討を行っていくことが肝要と指摘を行った。
 
(参考)相続等により取得した財産のうち取引相場のない株式の評価(特定)

https://www.jbaudit.go.jp/report/new/summary05/pdf/fy05_tokutyou_13.pdf