最低賃金引上げの影響が出始めた小規模企業景況

全国商工会連合会は、11月22日に小規模企業景気動向調査(2024年10月期調査)を発表した。この調査は、毎月、全国303商工会の経営指導員を対象として、小規模企業の景気動向等についての情報を収集し、結果をまとめているものである。8月期調査までの「賃上げへの対応」という表現から、今回、「最低賃金引上げの影響」への変化が見られる。
 
産業全体の景況について、採算・資金繰りDI(※)がわずかに低下、業況DIは小幅に低下している。多くの業種において、徐々にではあるが価格転嫁を進められていることが、売上額DIの低下が抑えられた要因としてあげられる。他方、最低賃金の引上げにより、パート従業員の内、配偶者控除の範囲内で就業している方々の労働時間が減少することで、人手不足が深刻化することを懸念するコメントが複数の業種で見られたとしている。
各業種の景況については、以下のとおりである。
 
製造業は、採算・業況DIがわずかに低下、資金繰りDIも小幅に低下している。他業種と比較して、最低賃金の改定に伴う人件費の増加に関するコメントが最も多く、影響の大きさが窺える。賃上げの傾向は、今後も継続する可能性が高く、業務効率化や価格交渉への取り組みの重要性がより一層高まっている。
 
建設業は、採算・資金繰りDIがわずかに低下、業況DIも小幅に低下している。前月同様、受注量は堅調だが、資材等の高騰や最低賃金の引上げによって採算が悪化しているとのコメントが多い。人手不足については、人材が確保できない厳しい状況であり、他業種に比べ遅れているITを活用した業務効率化に業界全体で取り組むことが必要不可欠である。
 
小売業は、採算・資金繰り・業況DIが小幅に低下している。食料品関連は全DIが低下し、10月からの価格改定により値上がりした商品が多く、買い控えが発生している。衣料品関連は売上額DIがわずかに上昇し、季節の切り替わりから売上が伸びた事業者が多くなっている。
 
サービス業は、売上額・業況DIが小幅に低下、資金繰りDIもわずかに低下、採算DIはわずかに上昇している。旅館関連は、行楽シーズンによる好況から、売上額・採算DIが上昇した。理・美容関連は、売上額・業況DIが低下し、節約志向が高まる中、固定客に来店頻度・顧客単価を維持してもらうための取り組みが重要である。
 
※ DI(景気動向指数)
各調査項目で、増加(好転)企業割合から減少(悪化)企業割合を差し引いた値を示す。
 
(参考)小規模企業景気動向調査 [2024年10月期調査]

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