令和7年度税制改正大綱解説【所得税・個人住民税】①

物価上昇局面における税負担の調整及び就業調整への対応については、(1)背景、(2)内容、(3)適用時期、(4)注意点は以下の通りである。
 
(1)背景
①基礎控除
所得税については、基礎控除の額が定額であることにより、物価が上昇すると実質的な税負担が増えるという課題があるため。
②給与所得控除
最低保障額が適用される収入である場合、収入が増えても控除額は増加しない構造であるため、物価上昇への対応とともに、就業調整にも対応するため。
③特定親族特別控除(仮称)
現下の厳しい人手不足の状況において、特に大学生のアルバイトの就業調整について、税制が一因となっているとの指摘があるため。
 
(2)内容
①基礎控除
合計所得金額が2,350万円以下である個人の控除額を10万円引き上げる。ただし、住民税については改正なし。
②給与所得控除
最低保障額を55万円から65万円に引き上げる。なお、家内労働者等の事業所得等の所得計算の特例について、必要経費に算入する金額も同様に65万円に引き上げられる。住民税についても同様に10万円引き上げられる。
③特定親族特別控除(仮称)
年齢19歳以上23歳未満の親族等を有する居住者については、年収150万円以下までは改正前同様に63万円の控除の適用がある。また、年収150万円を超えた場合でも年収188万円までは段階的に控除額が逓減する仕組みを導入する。
④その他
配偶者控除の対象となる配偶者、及び扶養控除の対象となる扶養親族の合計所得金額要件が58万円に引き上げられる。ひとり親控除の対象となる子の総所得金額等の合計額の要件は58万円に引き上げられる。勤労学生控除の合計所得金額要件を85万円以下に引き上げられる。
また、自動車通勤を行う者への通勤手当については、エネルギー価格が上昇する中、人事院による新たな調査が行われる際には、その結果に基づき、通勤手当の非課税限度額について迅速に見直しが行われることとなった。
 
(3)適用時期
令和7年分以後の所得税(住民税は令和8年度分以後)から適用
 
(4)注意点
自由民主党、公明党及び国民民主党の3党による協議が引き続き行われることとされているため、内容が変更になる可能性がある。