令和7年度税制改正大綱解説【資産課税】

事業承継税制の見直しについて、(1)背景、(2)内容、(3)適用時期は以下のとおりである。
 
(1)背景
事業承継税制には、会社の株式等を対象とする法人版事業承継税制(以下、「法人版」という。)と個人事業者の事業用資産を対象とする「個人版事業承継税制(以下、「個人版」という。)が設けられており、株式等又は事業用資産を贈与又は相続等により取得した場合において、それらに係る贈与税・相続税についての取扱いが規定されている。
いずれについても後継者要件が定められており、贈与税について、法人版では贈与の日まで3年以上継続して役員であること、個人版においては贈与の日まで3年以上特定事業用資産に係る事業に従事していたこととされている。相続税について、法人版では相続開始の直前において役員であること、個人版においては相続開始の直前において特定事業用資産に係る事業に従事していたこととされている。
なお、適用期限については、法人版特例措置が2027(令和9)年12月末、個人版は2028(令和10)年12月末となっている。
事業承継については、上記の制度が設けられているが、現実的には小規模企業や地方企業をはじめ、多くの法人、個人事業者において取組みが進んでいない状況にある。
法人版、個人版のいずれの税制においても上述のように後継者要件として、贈与の日まで3年以上継続して、役員等であること又は事業用資産に係る事業等に従事していたことが求められていたことから、事業承継の準備を行えていなかった事業者にとっては、本税制が適用できなくなる実質的な期限が、適用期限よりも先に到来することとなっていた。
 
(2)内容
 法人版について、「事業承継税制が適用されるためには、贈与日に後継者が役員に就任後3年以上経過している必要がある」、すなわち後継者が2024年12月末までに役員に就任する必要があったが、特例措置に限って後継者の役員就任期間(3年以上)の見直しが行われ、贈与の直前において役員に就任していればよいとされた。
 また、個人版についても、2025年12月末までに後継者が特定事業用資産に係る事業に従事する必要があったが、贈与の直前において事業に従事していればよいとされた。
 
(3)適用時期
令和7年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る贈与税について適用する。