令和5事務年度 租税条約等に基づく情報交換事績の概要

国税庁は1月31日、「令和5事務年度 租税条約等に基づく情報交換事績の概要」を公表した。
 
近年、個人投資家の海外投資や企業の海外取引が増加するなど、年々経済社会の国際化が進展している。このような中、OECDが策定・公表した共通報告基準(CRS)に基づく⾮居住者の金融口座情報の交換や、税源浸食と利益移転(BEPS)プロジェクトの進展などにより、富裕層や海外取引のある企業による海外への資産隠しのほか、各国の税制の違い等を利用して税負担を軽減する等の国際的な脱税及び租税回避に対して、関心が大きく高まっている状況にあり、G20やOECDにおいては、これらの問題に対処するため、各国税務当局間での協⼒・連携を一層推進していくこととしている。
 
こうした状況を踏まえ、国税庁においては、経済取引のグローバル化の進展に伴い、国境を越える取引が恒常的に行われ、資産の保有・運用の形態も複雑化・多様化する中、適正・公平な課税・徴収の実現のため、また、国際的な脱税及び租税回避に対処するため、租税条約等の規定に基づく外国税務当局との情報交換を積極的に実施している。
 
情報交換において、最も件数が多いものは自動的情報交換の「CRSに基づく非住居者の金融口座情報(CRS情報)の交換」であり、CRSは外国の金融機関等を利用した国際的な脱税や租税回避に対処するため、非居住者の金融口座情報(氏名・住所・口座残高など)を税務当局間で定期的に交換するための国際基準として、OECDが策定・公表したものである。
 
令和5事務年度は、日本居住者のCRS情報約246万件(個人口座約243万件、同残高約8.2兆円、法人口座約3万件、同残高約6.0兆円)を93か国・地域の外国税務当局から受領し、外国居住者のCRS情報約51万件(個人口座約49万件、同残高約1.1兆円、法人口座約2万件、同残高約4.5兆円)を80か国・地域の外国税務当局に提供している。
 
このほか、自動的情報交換として「国別報告書(CbCR)の交換」及び「法定調書情報の交換」を、これら以外に「自発的情報交換」、「要請に基づく情報交換」を行っている。
 
また、最近の動向としては、暗号資産等を利用した脱税等のリスクが顕在化したことを受け、2022年(令和4年)OECDにおいて策定、承認・公表された非居住者に係る暗号資産等取引情報の自動的交換の基準である「暗号資産等報告枠組み(CARF)」に対する取組があり、我が国では令和6年度税制改正において報告制度が整備され、2026年(令和8年)から本制度が施行されることとなっている。
 
(参考)令和5事務年度 租税条約等に基づく情報交換事績の概要

https://www.nta.go.jp/information/release/pdf/0025001-056.pdf