2017-08-29
相続税は、周知のように、2013年度税制改正において見直され2015年1月から課税強化されている。国税庁が昨年12月に公表した2015年分相続税の申告状況によると、課税強化の結果、課税対象被相続人数は前年分を83%上回る10万3043人と大幅に増加し、課税割合も前年分の4.4%から8.0%へと上昇した。こうした2015年分の相続税の課税状況の詳細が、国税庁が今夏に公表した統計情報等で明らかになっている。
それによると、注目されるのは課税価格階級別の被相続人数である。特に「課税価格階級1億円以下」は前年分の1万4846人から2015年分は6万238人へとほぼ4倍に増加している。対して、「課税価格階級1億円以上」は同4万1393人から4万2805人へと3%増加したに過ぎない。これは、相続税の基礎控除の引下げや税率構造の見直しなどの課税強化の結果、課税対象の裾野が大きく広がったことを意味する。
また、課税対象被相続人数は前年分を8割強上回ったが、相続財産価額から被相続人の債務や葬儀費用などを差し引き、相続開始前3年以内の生前贈与等を加算した相続税の課税価格は、14兆5554億円で前年比26.8%増加、税額も1兆8116億円で同30.3%増にとどまる。ここからも、課税対象被相続人数の増加は、相続税の課税強化によりこれまでなら課税対象とならなかった課税価格の少ない被相続人が多く含まれたことを物語る。
一方、相続税の課税強化の影響は富裕層の多い大都市圏で特に大きいと思われがちだが、実は地方圏でも大きな変化が生じている。確かに、課税対象となった被相続人数は大都市圏で大幅に増加している。課税対象被相続人数を国税局別にみると、「東京局」は前年分の1万8608人から3万2209人へと73%増加、「大阪局」は同9635人から1万6670人へと73%増加、「名古屋局」も同8591人から1万6031人へと87%増加した。
一方で、地方局の増加率に目を向けると、「仙台局」は前年分の1999人から4245人へと112%増、「札幌局」は同1207人から2452人へと103%増、「金沢局」は同1138人から2300人へと102%増と、これらの地方局の増加率は都市局を上回る。他の地方局も倍増とまではいかないが、「沖縄局」の65%増(385人→636人)を除き、大都市局を上回る増加率を示し、相続税の課税強化の影響は地方圏にも広がっている。
2015年分相続税の課税状況の詳細は↓
http://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/sozoku2015/pdf/05_kazeijokyo.pdf