2025-04-11
金融庁は令和7年3月4日、AIディスカッションペーパー「金融機関等におけるAIの活用実態と健全な利活用の促進に向けた初期的な論点整理」を公表した。
このディスカッションペーパーは、生成AIの加速度的な性能向上等により、AIが社会に広範に実装される段階に到達しつつあり、国民生活の向上等に大きく寄与する可能性がある一方で、生成AIを悪用した犯罪や偽・誤情報の拡散などのリスクが社会全体で強く意識されていることを背景に策定されており、金融分野においてもAI活用の検討が進展する一方で、リスクや規制面から利活用に躊躇する声もでているが、AIは将来的には金融業務を支える中核的な技術の一つとして、金融サービスの提供の在り方や金融機関等のビジネスモデルを抜本的に変革しうるものとなる可能性があり、「チャレンジしないリスク」を強く意識すべき局面にあるという問題意識のもと金融庁として健全なAI活用に向けた取組みを力強く後押し、規制への対応や中長期的な政策等の検討に資するものとして策定されたものである。
このディスカッションペーパーは、金融機関に対して2024年10月3日から11月15日に実施した「金融機関等のAIの活用実態等に関するアンケート調査」やヒアリング、国際的な議論の進展に基づいて作成され、従来型AI・生成AIの金融機関等のユースケース、課題解決に向けた取組み事例、金融庁自身のAI活用、今後の取組みの方向性等が示されており、金融機関でどのように生成AIが利活用されているかや生成AI利用の問題点、今後の金融庁等の取組みの方向性が示されており、税理士業務での生成AI活用のヒントになると思われるものとなっている。
金融分野におけるAI活用の可能性とユースケースでは、回答先のうち9割以上が従来型AIもしくは生成AIを既に活用しており、多くの金融機関やフィンテック事業者等が既に業務にAIの活用を導入していることがわかった。
生成AIの利用範囲としては、幅広く一般社員向けに生成AIの活用を認めている先が約7割となっており、導入後の利用状況は、大半の金融機関等において、導入直後と比較して継続的に利用されているか、現在の方がより活発に活用されている状況となっている。
生成AIユースケースは3類型(①社内利用(業務効率化等)、②対顧客サービスへの間接的な利活用、③対顧客サービスへの直接的な利活用)に分類されているが、現状は①に留まっている先が多く、今後対顧サービスでの活用に向けた検討を行っていくと回答した先も半数以上ある一方、ハルシネーション(生成AIが事実に基づかない情報や誤った内容を生成する現象)等のリスクを考慮して③はごく限定的であった。
金融機関等のAI活用に係る主な課題としては、①従来型AIと生成AIで共通の課題としてデータ整備、外部事業者との連携及びリスク管理、投資対効果があげられており、②生成AIにより難化した課題としては、説明可能性の担保、公平性・バイアス、AIシステムの開発・運用及びモデル・リスク管理、個人情報保護、情報セキュリティ・サイバーセキュリティ、専門人材の確保・育成及び社内教育、③生成AIがもたらした新たな課題としては、ハルシネーション、生成AIの金融犯罪への悪用、その他の金融システム安定上の論点があげられている。
(参考)AIディスカッションペーパーの公表について
https://www.fsa.go.jp/news/r6/sonota/20250304/aidp.html