日商、「大事業承継時代」を乗り切る税制措置を要望

日本商工会議所がこのほど取りまとめ公表した「2018年度税制改正に関する意見」では、中小企業の活力を最大限引き出す税制の整備が必要として、団塊世代の経営者が大量引退期を迎える「大事業承継時代」を乗り切るための税制措置の抜本的拡充、所得拡大促進税制や少額減価償却資産の特例の拡充のほか、商業地等に係る固定資産税の負担調整措置の見直しへの反対等を主張した。

まず、中小企業の価値ある事業を次世代に承継し、新たな挑戦を促す税制の実現のため、(1)諸外国並みの事業承継税制の確立、(2)事業承継のために後継者へ自社株を生前贈与した場合は、大幅な評価減・軽減税率を適用、(3)M&Aを後押しするインセンティブ税制の創設、(4)所得拡大促進税制の複雑な適用要件の緩和・拡充、(5)中小企業の生産性向上に資する、少額減価償却資産の取得価額の損金算入制度の拡充・本則化、を掲げた。

(1)の諸外国並みの事業承継税制の確立では、成長に必要な経営人材の登用を制限する代表者要件・筆頭株主要件等の見直しや、事業環境の変化への対応を制限する事業継続要件の見直し(承継後5年間で納税免除等)、税制の効果を薄め、複雑化させている対象株式総数制限の撤廃、深刻な人手不足を踏まえた雇用要件のあり方の見直し等を求めた。また、(3)では譲渡所得税の特別控除特例等を、(4)では教育訓練費等の対象化を要望している。

次に、地域活性化、企業の生産性向上・活力強化に資する税制措置として、商業地等に係る固定資産税の負担調整措置の見直しには反対、域内消費を喚起する中小企業の交際費課税の特例の延長・拡充、e-TaxとeLTAXの統合・連携強化による申告・納税手続きのワンストップ化の推進、申告受付時間の拡大(土日祝日・年末)、外形標準課税の中小企業への適用拡大など中小企業の経営基盤を毀損する税制措置への反対などを主張した。

そのほか、消費税率引上げに伴う課題として、持続可能な社会保障制度の確立や少子化対策の充実・強化のため、2019年10月の消費税率10%引上げを確実に実施することや、中小企業に過度な事務負担を強いることになる軽減税率・インボイス制度は導入すべきではないこと、軽減税率の導入はゼロベースで見直すとともに、インボイス制度は、廃止を含め、慎重に検討すべきことなどを求めている。

日商の「2018年度税制改正に関する意見」は↓
http://www.jcci.or.jp/files/honbun.pdf