政府税調、年末調整手続き「電子化」の方向で協議

国税庁は本年6月にICT・AIを活用した約10年後の「税務行政の将来像」を公表。その実現に向けて、e-Taxの使い勝手の改善等を通じた申告・納付のデジタル化の推進によって、納税者の利便性の向上とともにデータ基盤の充実を図り、AI技術等を取り入れながら、段階的に取り組んでいくとしたが、政府税制調査会は16日の会合で、社員の所得税の過不足を会社が代わって精算する年末調整の手続きを電子化する方向で議論した。

年末調整は、毎月の源泉徴収税額の累積額と、年間を通じた給与所得に係る年税額の差を12月に精算するもので、扶養家族の変更や給与からの源泉徴収に反映されない住宅ローン控除(適用者300万人)や生命保険料控除(同3100万人)、地震保険料控除(同700万人)などを加味した最終的な税額の調整を、年末に社員に代わって会社が行う仕組み。年末調整を実施している者は4300万人にのぼる。

現在、住宅ローン控除や生命保険料控除、地震保険料控除を適用するには、年末のローン残高証明書や保険料控除証明書を銀行や生命保険会社等から郵送で受け取り、これら紙の証明書を勤務先に提出する必要がある。その際、給与所得者の保険料控除申告書などの関係書類を作成して一緒に提出する必要があり、会社や社員からは、一連の手続きが非常に煩雑との指摘が多い。

年末調整の電子化では、こうした控除証明書を電子化し、インーネット上で簡単に手続きできるようにすることで個人や企業の利便性を高め、事務負担の軽減を図るのが狙いだ。規制改革実施計画を踏まえ、確定申告・年末調整手続きの電子化を推進し、具体的には、保険会社や銀行等の控除関係機関→個人→税務署・雇用主という情報の流れが基本的にネットで完結する仕組みを目指す。

こうした仕組みに寄与する観点から、年末調整手続きにおいて、会社員が、控除関係機関から電子的に交付された証明書を用いて簡便・正確に控除申告書を作成し、勤め先の会社に対して電子的に提出することを可能とする仕組みを、国税庁において構築・提供する予定だ。財務省と国税庁はすでに銀行や保険会社との協議を開始しており、12月に決定する2018年度税制改正大綱に電子化対応が盛り込まれるものとみられる。