2017-11-16
無申告は、申告納税制度の下で自発的に適正な納税をしている納税者に強い不公平感をもたらすことになるため、的確かつ厳格な対応が求められる。無申告者は、その存在自体の把握が難しいことから、国税当局は、有効な資料情報の収集や活用を図り、的確な課税処理に努めている。国税庁が今年6月までの1年間(2016事務年度)に実施した高額・悪質と見込まれた無申告者に対する実地調査は7612件(前事務年度7445件)行われた。
実地調査の結果、申告漏れ所得金額の総額は1406億円(前事務年度1465億円)把握した。追徴税額は、総額で146億円(同150億円)、1件当たりでは192万円(同202万円)だった。2016事務年度は実地調査全体(特別・一般)が4万9012件行われているから、全体の約16%が無申告者に対する調査に充てられ、実地調査全体の申告漏れ所得金額4499億円の約31%が無申告者に係るものだったことになる。
1件当たりの申告漏れ所得金額は1847万円となり、前事務年度の1968万円から6.1%減少したものの、実地調査全体の1件当たり申告漏れ所得金額918万円の約2倍と高額だ。前事務年度に比べ調査件数は2.2%増加している。こうした調査結果からいえることは、結構高額な所得がありながら、国税当局にはばれまいと高をくくって申告しない納税者がいかに多いかということだろう。
また、消費税の無申告者に対しては、2016事務年度において実地調査(特別・一般)8816件(前事務年度8119件)が行われた結果、追徴税額は135億円、1件当たりでは153万円だった。2016事務年度の消費税に係る実地調査全体は2万8211件行われているから、全体の約31%が無申告者に対する調査に充てられ、消費税の実地調査全体の追徴税額221億円の約61%が無申告者に係るものだったことになる。
調査事例では、数年おきに他人名義で所得税の申告を行うことで、自身が実質所得者であることを隠し、消費税の課税を不正に免れていた高級バーを営む事業者Aの例がある。Aは、消費税が無申告だっただけでなく、自身が負担する友人名義の所得税申告に係る所得税を減らすため、現金売上の除外や架空経費の計上などを行っていた事実も判明。Aに対しては、所得税7年分の申告漏れ所得金額約5300万円について重加算税込みの追徴税額約1000万円及び消費税5年分の重加算税込みの追徴税額約1400万円が課されている。