2017-11-21
事業を行っているにもかかわらず申告をしていない法人を放置しておくことは、納税者の公平感を著しく損なうものであることから、国税庁では、こうした稼働無申告法人に対する調査に重点的に取り組んでいる。今年6月までの1年間(2016事務年度)においては、事業を行っていると見込まれる無申告法人2623件(前年対比2.7%増)に対し実地調査を実施し、法人税63億6700万円(同38.7%増)を追徴課税した。
また、消費税については1988件(前年対比0.4%増)を実地調査した結果、消費税50億2100万円(同24.4%増)を追徴課税。法人税と合わせると113億8800万円(同32.0%増)を追徴課税している。このうち、稼働している実態を隠し、意図的に無申告であった法人税363件(同16.3%増)及び消費税244件(同14.0%増)の法人に対し、法人税27億5100万円(同23.5%増)、消費税14億9400万円(同94.0%増)を追徴課税した。
稼働無申告事案では、事業活動を隠ぺいする目的で移転登記をせずに無申告だった、甲署管内で建物の解体工事などを営むA社の例がある。取引先法人に対する調査において、本店登記が遠隔地(乙署管内)であるA社に対する支払いを把握したため、実態を確認したところ、無申告だったことから調査が行われた。その結果、A社は、事業活動を隠ぺいするため、(1)事業の実態のない遠隔地に本店登記を置いたままであることが分かった。
さらに、(2)外注費の支払等を全て現金で行い、(3)原始記録を破棄して帳簿書類も作成せず、税務申告を不正に逃れていたことが把握された。A社に対しては、7年間の法人税の申告漏れ所得金額1億5400万円について追徴税額4800万円(加算税込み、重加算税あり)を、及び5年間の消費税について追徴税額2000万円(加算税込み、重加算税あり)がそれぞれ課されている。
一方、申告はしているものの赤字としていた無所得申告法人3万3400件を実地調査した結果、うち約7割に当たる2万4000件から2534億円の申告漏れ所得金額を把握し222億円を追徴課税した。また、調査した約4件に1件となる8000件が不正を働いており、その不正所得金額は1102億円となるとともに、6割強の5000件は実は黒字法人で、実地調査件数全体の13.4%(有所得転換割合)が黒字法人だったことが明らかになっている。