2017-11-27
国税庁が公表した2016事務年度の相互協議の状況によると、今年6月までの1年間に相互協議事案は162件(前事務年度195件、約17%減)発生し、うち事前確認に係るものが131件(同151件、約13%減)と全体の約8割を占めたことが分かった。同庁では、移転価格課税等による国際的な二重課税について納税者の申立てを受けた場合、租税条約の規定に基づき外国税務当局との相互協議を実施してその解決を図っている。
移転価格税制は、法人と関連企業(国外関連者)との取引が第三者間の取引価格(独立企業間価格)と異なる場合、その取引価格を正常な価格に引きなおして課税する制度だが、相互協議は、移転価格課税における二重課税を防ぐため、国税庁が外国の税務当局と交渉するもの。また、事前確認とは、納税者が税務当局に事前に申し出た独立企業間価格の算定方法を税務当局が確認した場合には、移転価格課税は行わないという制度だ。
2016事務年度に相互協議が終了した処理件数は、前年度より16件多い171件、このうち事前確認に係る相互協議の処理件数は同17件多い143件で、ともに2年連続で増加した。この結果、2016事務年度末の相互協議事案の繰越件数は、4年ぶりに処理件数が発生件数を上回り、同9件減の456件と4年ぶりに減少した。このうち事前確認は同12件減の343件、移転価格課税は同3件減の94件だった。
2016事務年度の処理事案1件当たりに要した平均的な期間は、29.1ヵ月(前事務年度26.0ヵ月)と3.1ヵ月長期化。そのうち、事前確認に係るものは、同様に28.9月(同25.7ヵ月)と3.2ヵ月長期化した。また、処理件数171件を業種別にみると、その他の製造業(52件)など「製造業」が全体の63.7%を占める109件、貿易業(25件)を含む「卸売・小売業」が同27.5%の47件、「その他」が同8.8%の15件だった。
処理事案の対象取引別の内訳をみると、「棚卸取引」が129件、「役務提供取引」が101件、「無形資産取引」が73件。なお、OECD非加盟国との協議事案の割合は増加傾向にあり、2016事務年度の発生件数のうち約25%(41件)、処理件数のうち約16%(28件)、繰越件数のうち約39%(178件)をOECD非加盟国が占めている。また、2016事務年度末の相互協議繰越事案の相手国・地域の数は、5ヵ国・地域増の27ヵ国・地域だった。
2016事務年度の「相互協議の状況」の詳細は↓
http://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2017/sogo_kyogi/index.htm