2017-12-12
先日の会計検査院の指摘も踏まえて、相続税の小規模宅地等の特例が2018年度税制改正において見直される見通しだ。同特例は、事業用・居住用宅地等の相続税の課税価格を8割又は5割減額して相続人の事業や居住の継続等への配慮を目的に創設された制度だが、会計検査院は、その特例適用後短期間での譲渡が多数あったことから政策目的に沿ったものとなっていないケースがあるとして、その見直しを求めていた。
小規模宅地等の特例には8割減額が認められる居住用宅地と5割の減額が認められる事業用宅地の2パターンがある。居住用宅地で問題となるのは、相続開始前3年以内に持ち家に居住していない相続人、いわゆる“家なき子”の節税策だ。具体的には、相続人となる者が自分の子などの親族に自己の持ち家を売却し、自分は借家や社宅などに居住する状態から3年経過後に相続が開始して特例の評価減を受けるケースだ。
被相続人に配偶者も同居の他の相続人もいなければ、被相続人の居住用宅地の評価額から8割を減額することができる。今回の見直しでは、(1)相続開始時に、自分はもとより、その配偶者や3親等内の親族等が所有する家屋に居住している者を特例の対象から除外する、(2)相続開始時に借家に住んでいたとしても、その家屋を相続前に所有していたことがある場合も除外し、純粋な借家住まいしか特例適用を認めないこととする。
一方、事業用宅地で問題となっているのは、被相続人の生前に、現金を売買しやすい貸付用不動産に換える節税策で、相続前に、現金を一時的に不動産に変換しておくことで貸付事業用宅地として特例の適用を受けて評価額の5割を減額することができる手法だ。会計検査院の調査でも、相続人が特例の適用を受けた後、相続税の申告期限から1年以内に譲渡していた貸付事業用宅地が多数見受けられたという。
今回の見直しでは、上記の節税策に対して、相続開始前3年以内に貸付けを開始した不動産については特例の対象から除外することで対応する。ただし、事業的規模で貸付けを行っていた場合には、この規制の対象から外す。以上のような見直しで、居住用・事業用宅地として特例の適用を受けながら、相続開始後の短期間にその土地を譲渡してしまう節税策の封印を図る考えだ。14日にまとめる予定の与党税制改正大綱が注目される。