2017-12-21
所得税の申告の際に、競馬の外れ馬券の購入代金を必要経費として算入できるか否かの判断が争われた事件で、最高裁第二小法廷(菅野博之裁判長)は12月15日、控訴審の判決内容を支持、競馬の当たり馬券の払戻金は雑所得に該当するとともに、外れ馬券の購入代金は雑所得である当たり馬券の払戻金を得るため直接に要した費用として必要経費に該当すると判示し、控訴審と同様、国側の主張を棄却する判決を言い渡した。
この事件は、長期間にわたって馬券を購入し、当たり馬券の払戻金を得ていた者が、確定申告の際、当たり馬券の払戻金は雑所得、外れ馬券の購入代金は必要経費に当たると判断して総所得金額及び納付税額を計算して申告したのが発端。しかし原処分庁が、所得は一時所得に該当するため、外れ馬券の購入代金を一時所得に係る総収入金額から控除できないと否認、所得税に係る更正処分、無申告加算税等の賦課決定処分をしてきたため、馬券の購入者がその取消しを求めて提訴したという事案だ。
その結果、一審の東京地裁は原処分庁の判断を支持して棄却したが、控訴審の東京高裁は雑所得に該当し、外れ馬券の購入代金は必要経費に当たると判断、原処分を取り消したため、国側が控訴審の判決の取消しを求めて上告していた。外れ馬券を巡る訴訟では、最高裁が2015年に、馬券を自動的に大量購入するソフトを使った事案で「外れ馬券代は経費に当たる」と初判断した例がある。今回の事案は、ソフトは使わず、競走馬の能力や騎手(技術)、枠順などから着順を予想していた。
最高裁はまず、控訴審で確定した事実関係等を整理した上で、馬券購入の期間、回数、頻度その他の態様に照らせば、一連の行為は継続的行為と言えると指摘。また、馬券購入の態様に加え、利益発生の規模、期間その他の状況等に鑑みると、回収率が総体として100%を超えるように馬券を選別して購入し続けてきたと認め、そうした一連の行為は、客観的に見て営利を目的とするものであったということができるとも指摘した。
そうした判断から、払戻金は営利を目的とする継続的行為から生じた所得として、所得税法35条1項にいう雑所得に当たると解するのが相当と判示。さらに、一連の馬券の購入により利益を得るためには、外れ馬券の購入は不可避だったとも指摘。その上で、外れ馬券の購入代金は、当たり馬券の払戻金を得るため直接に要した費用として、所得税法37条1項が定める必要経費に当たると判示した。結局、裁判官全員一致で、国側の上告を棄却する判決を言い渡して、納税者勝訴で事件は確定した。
同判決の全文は↓
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/308/087308_hanrei.pdf