事業承継税制の特例の創設、100%納税猶予に引上げ

2018年度税制改正において、事業承継税制は10年間の特例措置として、各種要件の緩和を含む抜本的な拡充を行う。基本は、施行日後5年以内に承継計画を作成して贈与・相続による事業承継を行う場合とし、まず、猶予対象の株式の制限(発行済議決権株式総数の3分の2)を撤廃し、納税猶予割合80%を100%に引き上げることにより、贈与・相続時の納税負担が生じない制度とする。

具体的には、「特例後継者(仮称)」が「特例認定承継会社(仮称)」の代表権を有していた者から、贈与又は相続等によりその特例認定承継会社の非上場株式を取得した場合には、その取得した全ての株式に係る課税価格に対応する贈与税又は相続税の全額について、その特例後継者の死亡の日等までその納税を猶予する。「特例認定承継会社」とは、2018年4月1日から2023年3月31日までの間に特例承継計画を都道府県に提出した会社をいう。

次に、承継後5年間で平均8割の雇用を維持するという雇用確保要件を緩和するとともに、2名又は3名の後継者に対する贈与・相続に対象を拡大し、経営環境の変化に対応した減免制度を創設して、将来の税負担に対する不安に対応する等の特例措置を講ずる。雇用確保要件の緩和は、要件を満たせない場合であっても、その理由を記載した書類を都道府県に提出することで、納税猶予の期限は確定しないこととする。

また、現行制度では筆頭株主のみが相続税の猶予対象となるが、筆頭株主以外にも最大3名まで猶予する。そのほか、現行制度では会社を譲渡・合併・解散した場合には、納税猶予税額を全額納付する必要があるが、経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合において、特例承継期間経過後に、会社の非上場株式の譲渡や合併による消滅、会社を解散するときは、その時点での株式評価額で税額を再計算して一定範囲で猶予税額を減免する。

「経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合」とは、直前の事業年度終了の日以前3年間のうち2年以上、特例認定承継会社が赤字の場合や売上高がその年の前年の売上高に比べて減少している場合、直前の事業年度終了の日における特例認定承継会社の有利子負債の額が、その日の属する事業年度の売上高の6月分に相当する額以上ある場合、などをいう。これらの改正は、2018年1月1日から2027年12月31日までの贈与等に適用する。