海外転勤中に株式を譲渡した場合での課税対象の所得は

給与所得者が1年以上の予定で海外の支店などに転勤すると、一般的には日本国内に住所を有しない者と推定され、所得税法上の非居住者となる。非居住者の場合、日本で課税を受けるのは国内源泉所得のみとされている。また、非居住者に対する課税は、日本国内に恒久的施設を有するか否かでその方法が異なる。給与所得者が海外出向中であれば、一般的には恒久的施設を有しない非居住者に該当する。

恒久的施設を有しない非居住者が株式等を譲渡した場合、次の(1)から(6)のいずれかに該当する所得が申告対象の国内源泉所得として課税対象となる。このうち、(1)から(5)に該当するものについては、「上場株式等に係る譲渡所得等の金額」と「一般株式等に係る譲渡所得等の金額」に区分し、他の所得の金額と区分して税金を計算する申告分離課税となり、(6)に該当するものは総合課税の対象となる。これらに該当する場合は確定申告が必要だ。

(1)同一銘柄の内国法人の株式等の買集めをし、その所有者である地位を利用して、その株式等をその内国法人若しくはその特殊関係者に対し、又はこれらの者若しくはその依頼する者のあっせんにより譲渡をすることによる所得(買集めによる株式等の譲渡)、(2)内国法人の特殊関係株主等である非居住者が行うその内国法人の一定の株式等の譲渡による所得(事業譲渡類似の株式等の譲渡)。

(3)税制適格ストックオプションの権利行使により取得した特定株式等の譲渡による所得、(4)不動産関連法人の一定の株式の譲渡による所得、(5)日本に滞在する間に行う内国法人の株式等の譲渡による所得、(6)日本国内にあるゴルフ場の株式形態のゴルフ会員権の譲渡による所得。なお、これらに該当する場合であっても、租税条約により日本で課税されないことがある。

ただし、2015年度税制改正により、国外転出時課税制度が創設され、2015年7月1日以後に国外転出(国内に住所及び居所を有しないこととなることをいう)をする一定の居住者が1億円以上の対象資産を所有等している場合には、その対象資産の含み益に所得税及び復興特別所得税が課税されることになった。国外転出をするときに、1億円以上の有価証券等を所有等している場合は、所得税の確定申告等の手続きが必要となる。