国外財産の相続・贈与の納税義務の範囲を再度見直し

国外財産に対する相続・贈与の納税義務の範囲については、2017年度税制改正において、国際的租税回避行為の抑制等の観点から、相続人(受贈者)が日本に住所を有せず、日本国籍を有しない場合でも、被相続人(贈与者)が10年以内に日本に住所があった時は、国内・国外双方の財産が相続税・贈与税の課税対象になるように見直されたが、この見直しに対する強い批判を踏まえ、2018年度税制改正において再度見直されることになった。

昨年度の改正は課税逃れ防止を目的としたものだが、一方で、高度外国人材の受入れ促進のため、日本国籍を有さずに、「一時滞在」している場合の相続・遺贈の係る相続税は、国内財産のみが課税対象とされた。一時滞在とは、国内に住所がある期間が相続開始前15年以内で合計10年以下の滞在をいう。しかし、引退後に母国に戻った外国人が死亡した場合にまで、国外財産に日本の相続税を課すのは“酷”ではないかとの批判が起こっていた。

そこで、2018年度税制改正においては、相続開始又は贈与の時において国外に住所を有する日本国籍を有しない者等が、国内に住所を有しないこととなった時前15 年以内において、国内に住所を有していた期間の合計が10 年を超える被相続人又は贈与者から相続若しくは遺贈又は贈与により取得する国外財産については、相続税又は贈与税を課さないこととするように改められる。

この場合の被相続人又は贈与者は、その期間引き続き日本国籍を有していなかった者であって、その相続開始又は贈与の時において国内に住所を有していないものに限られる。ただし、その贈与者が、国内に住所を有しないこととなった日から同日以後2年を経過する日までの間に国外財産を贈与した場合において、同日までに再び国内に住所を有することとなったときにおけるその国外財産に係る贈与税については、この限りでないとされる。

例えば、日本に10年を超えて滞在した外国人が、出国後に贈与を行い、出国から2年以内に再び日本に住所を戻したようなケースでは、国外財産にも課税されることになる。今回の改正は、外国人が出国後に行う相続・贈与の国外財産への課税を、昨年度改正での「一時滞在」並みに緩和したものといえよう。この改正は、2018年4月1日以後に相続・遺贈又は贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用することとされる。