新・広大地評価の懸念材料、適用には十分な注意を!

広大地の評価については、2017年度税制改正を踏まえ、昨年9月に財産評価基本通達が改正され、それまでの面積に比例的に減額する評価方法から、各土地の個性に応じて形状・面積に基づき評価する方法に見直すとともに、曖昧だった適用要件を明確化する旨が明記された。今年1月から改正通達は適用されているが、かえって負担増となってしまうケースもあるので適用に際しては十分な注意が必要だ。

見直しが行われたのは、不明確な適用要件と画一的な評価方法。従来、周辺の宅地と比べて著しく広大な宅地については、一定の要件を満たすと「広大地」として相続税評価が大幅に減額されてきた。一定の要件とは、(1)1000平方メートル以上(三大都市圏は500平方メートル以上)、(2)マンション適地ではなく、開発されていない、(3)開発行為を行う際につぶれ地(住人用の通路など)を造成する必要がある、などである。

しかし、(2)と(3)は極めて不明確で見解の相違によるトラブルが絶えなかったことから適用要件の明確化が図られた。具体的には、「広大地」が「地積規模の大きな宅地」に改められ、「地積規模の大きな宅地」の認定要件が、(1)1000平方メートル以上(三大都市圏は500平方メートル以上)、(2)普通商業地区、併用住宅地区、普通住宅地区に所在、(3)容積率が400%未満(東京23区では300%未満)等とされた。

曖昧だった「つぶれ地(住人用の通路など)」の要件がなくなり、地区区分や容積率といった明確な要件に絞られたことで適否の判断が容易になった。しかし、納税者にとっては不利になる可能性もある。適用要件の明確化と合わせて評価方法の見直しが行われているためだ。改正では、従前の面積に比例して減額する評価方法から、土地の形状・面積など個性に応じて評価する方法に見直された。

新しい「地積規模の大きな宅地」の評価の計算式は「路線価×各種補正率×規模格差補正率×地積」。従来は「広大地」と認定されれば土地の形状に関係なく約50%の評価減が受けられたが、評価方法が繊細になったことで土地の大きさや形状が評価にダイレクトに影響することになった。形状の良い土地については評価額が大きく上がる可能性が高く、また、地積が大きいほど上昇率が高くなる傾向がある。

相続税の負担増を回避するため昨年中に生前贈与して相続時精算課税制度を駆け込み適用するケースも見られたようだが、新制度は今年1月1日以後の相続、遺贈又は贈与により取得した土地の評価から適用されているので、すでに逃げ道は塞がれている。納税者目線でわかりやすくなった一方で、評価が厳密になった新制度。将来、適用を検討しているなら一度評価額を計算しておく必要がありそうだ。