「納期の特例」を適用しても1ヵ月ごとの納付も可能

源泉徴収した所得税及び復興特別所得税は、原則として、給与などを実際に支払った月の翌月10日までに国に納めなければならないが、給与の支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者は、源泉徴収した所得税及び復興特別所得税を、半年分まとめて納めることができる特例がある。これを「納期の特例」という。主に小規模事業者向けの特例であり、源泉徴収義務者全体のうち約7割超が適用しているという。

この特例の対象となるのは、給与や退職金から源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税と、税理士、弁護士、司法書士などの一定の報酬から源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税に限られている。この特例を受けていると、その年の1月から6月までに源泉徴収した所得税及び復興特別所得税は7月10日、7月から12月までに源泉徴収した所得税及び復興特別所得税は翌年1月20日が、それぞれ納付期限になる。

この特例を受けるためには、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を、給与等の支払を行う事務所などの所在地を所轄する税務署長に提出することが必要だ。税務署長から納期の特例申請書の却下の通知がない場合には、この納期の特例申請書を提出した月の翌月末日に、承認があったものとみなされる。この場合には、承認を受けた月に源泉徴収する所得税及び復興特別所得税から、納期の特例の対象になる。

ところで、納期の特例を適用しているからといって、必ずしも半年分まとめて源泉所得税を納付する必要はなく、例えば、1ヵ月や数ヵ月ごとに納付することも認められている。仮に、多くの利益が生じた月であれば、同特例の適用による納期限まで待たずに、原則通り、1ヵ月分の源泉所得税を翌月に納付しても問題はない。納期の特例は、あくまで原則の納期限を“半年ごとに延長”するものであり、それを強制する特例ではないのだ。

なお、給与の支給人員が常時10人を超えることになるなど、源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなった場合は、「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」を提出することが必要となる。この届出書を提出した場合には、その提出した日の属する納期の特例の期間から所得税法第216条に規定する納期の特例の承認の効力が失われることになる。