特定支出控除、自動車での帰宅旅費の追加等の拡大

2018年度税制改正では、給与所得控除の見直しに併せ、特定支出控除も見直される。(1)特定支出の範囲に、職務の遂行に直接必要な旅費等で通常必要と認められるものを追加、(2)特定支出の範囲に含まれている単身赴任者の帰宅旅費について、1ヵ月に4往復を超えた旅行に係る帰宅旅費を対象外とする制限を撤廃するとともに、帰宅のために通常要する自動車を使用することにより支出する燃料費及び有料道路の料金を加える。

給与所得者の必要経費という点から給与所得控除を見直すときに、一体的に取り上げられてきたのが「特定支出控除」である。通勤費、転居費、研修費、資格取得費、単身赴任者の帰宅旅費、勤務必要経費(書籍購入費・衣服費等の合計額:上限65万円)の6つの種類の特定支出の年間合計額が、給与所得控除額の2分の1を超えるときに、超える部分の金額を給与所得控除後の所得から差し引ける。

制度が創設されたのは1987年度改正で1988年分の所得税から適用が始まった。当初は特定支出の範囲が狭く限定されていたことや、給与所得控除額全額を超えなければ特定支出控除が適用されなかったことから、適用者はほとんどなく、長らく一ケタ台が続いていたが、資格取得費への弁護士・税理士等の追加や勤務必要経費が新たに適用対象となった2013年分に約1600人と急増し、以後千人を超える適用者が出てきている。

この特定支出控除を受けるためには、確定申告を行う必要がある。その際、特定支出に関する明細書及び、給与の支払者の証明書を申告書に添付するとともに、搭乗・乗車・乗船に関する証明書や支出した金額を証する書類を申告書に添付又は申告書を提出する際に提示する。以上の書類のほかに給与所得の源泉徴収票も申告書に添付する必要がある。なお、今回の見直しは所得税法及び関係政省令を改正し、2020年分以後の所得税から適用する。