2018-03-15
納税者が一般の寡婦(夫)であるときは、一定の金額の所得控除を受けることができる。これを「寡婦(夫)控除」という。しかし、非婚のひとり親、いわゆるシングルマザーには適用されないことから、その見直しを求める声が以前から多い。与党の2014年度税制改正大綱から検討事項に明記されてきたが、いまだ実現していない。だが、2018年度税制改正大綱の表現から、その実現性がにわかに高まっている。
与党の2018年度税制改正大綱における検討事項の一つとして、「子どもの貧困に対応するため、婚姻によらないで生まれた子を持つひとり親に対する税制上の対応について、児童扶養手当の支給に当たって事実婚状態でないことを確認する制度等も参考にしつつ、2019年度税制改正において検討し、結論を得る」と明記された。つまり、これまでの「検討する」から「結論を得る」との強い意向が示されたのだ。
この背景には、非婚のひとり親を支援する「寡婦(夫)控除のみなし適用」を実施する地方自治体の全国的な広がりがある。地方自治体では、経済的弱者救済の観点から、利用者の所得により、保育所の保育料や公営住宅家賃の負担軽減額の算定、社会福祉施設の利用資格などを判定している。その際、“配偶者と死別または離婚”という税法上の寡婦(夫)控除要件に該当すれば、寡婦(夫)控除額相当分を所得から減額する方法を採用している。
現行の寡婦(寡夫)控除制度は控除額が所得税27万円、住民税26万円。配偶者と離婚あるいは死別し、かつ扶養親族を有するなど一定の条件の場合にしか認められておらず、非婚者は制度の対象外となっている。だが、寡婦(寡夫)控除は、税負担のみならず、公営住宅の家賃や保育料、国民健康保険料など住民サービスのさまざまな場面で所得の基礎計算に使われるため、適用の有無が生活上の大きな格差を生むことになる。
例えば、いわゆる非婚のシングルマザーの場合は、この要件に該当しないため、同じひとり親世帯で同じ所得であっても婚姻歴の有無で行政サービスの利用に差があるのは不公平との声が高まっていた。そこで、結婚歴のない非婚のひとり親家庭の経済的負担を軽減するため、ひとり親世帯でも寡婦(夫)控除が適用されるものとみなして所得額の計算をする「寡婦(夫)控除のみなし適用」を採用する地方自治体が増えてきたわけだ。
寡婦(寡夫)控除制度が税法上設けられた背景には、ひとり親の生活を税務面から支援するという考えがある。ところが、同じひとり親でも未婚のひとり親はこの適用対象から外れてしまう。こうした不公平を解消する寡婦(寡夫)控除制度の見直しが、2019年度税制改正で実現するか注目されるところだ。