国によって異なる「交際費」の税務上の取扱い

交際費とは、法人の得意先や仕入先など事業に関係のある人等に対する接待、きょう応、慰安、贈答などのために支出する費用をいう。交際費等の損金不算入制度は、2018年度税制改正において2020年3月31日まで2年間延長された。わが国では、接待飲食費の50%まで損金算入が認められ、中小法人については定額控除限度額(年800万円)との選択制となる。以下、財務省の資料から、2016年4月現在の主要国の交際費の取扱いを紹介する。

海外では、事業の遂行にとって直接必要とされる部分は損金算入というおおらかな国と、一切認めない厳しい国がある。交際費が原則一切損金に算入できない国はイギリスだ。同国では、費用を損金算入するためには、主たる事業目的に直結したものでなければならず、交際費は損金不算入とされる。ただし、広告宣伝用の少額贈答品(飲食物、たばこ、商品券を除く)については、受贈者1人当たり年間50ポンド(8200円)まで損金算入できる。

一方、フランスでは、一般に事業の遂行上直接必要な経費で過大でない交際費は原則全額損金に算入できる。ただし、狩猟や釣りのための支出、ヨット・モーターボート・別荘の保持・使用のための支出などで、事業の目的上必要であることが証明されないものは損金に算入できない。接待費用は年間6100ユーロ(78.1万円)、贈答費用は年間3000ユーロ(38.4万円)を超えた場合には、申告時に明細書の提出が義務付けられている。

また、ドイツでは、原則、交際費の70%が損金算入できる。損金算入に当たっては、(1)取引通念に照らし相当であり、かつ、(2)金額、日時、場所、目的及び参加者について、書面により届け出ることなどが要件となっている。贈答費用については、受贈者1人当たり年間35ユーロ(4480円)を超えない場合は全額を損金算入できる(35ユーロを超えた場合は全額損金不算入となる)。

アメリカでは、原則、交際費の50%を損金算入できる。損金算入に当たっては、(1)事業の遂行に当たって、通常かつ必要なものであり、かつ、(2)直接事業に関連すること、などが要件。ただし、クラブ(業界・娯楽・スポーツなどに関係する全てのクラブ)の入会金・会費、及び接待・レクリエーション施設に係る費用は、損金に算入できない。贈答費用については、受贈者1人当たり年間25ドル(2875円)まで損金算入できる。

なお、邦貨換算レートは、1ドル=115円、1ポンド=164円、1ユーロ=128円(基準外国為替相場及び裁定外国為替相場:2016年4月中旬適用)としている。