注意を要する役員の退職金の損金算入時期

法人が役員に支給する退職金で適正な額のものは、損金経理を条件として、損金算入が認められている。その退職金の損金算入時期は、原則として、株主総会の決議等によってその退職金の額が具体的に確定した日の属する事業年度とされている。また、法人が、退職金を実際に支給した事業年度に損金経理をした場合には、仮に株主総会の決議を経る前であっても損金算入が認められることになっている。

ただし、退職金の額が具体的に確定する事業年度より前の事業年度において、取締役会で内定した金額を損金経理により未払金に計上した場合であっても、その事業年度での損金算入は認められない。その後、その退職金が確定した事業年度又は退職金を支給した事業年度において、確定し又は支給した額を確定申告書において損金算入したときは、その退職金を損金経理したものとして取り扱うこととされている。

法人によっては、資金繰りなどの都合で退職金を年金で支払うところもあるが、退職年金は、その年金を支給すべきときに損金算入すべきものとされている。したがって、退職したときに年金の総額を計算して未払金に計上しても損金算入することはできない。この場合、退職年金を支給するつどその未払金を取り崩して退職年金にあてる経理をして、確定申告書において損金算入したときに損金経理が認められる。

そのほか、「分掌変更」によって役員退職金を支給する場合には、「役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情がある」と認められなければ、損金算入は認められない。その事実について、基本通達では、(1)常勤役員が非常勤役員になったこと、(2)取締役が監査役になったこと、(3)分掌変更等の後におけるその役員の給与が激減(おおむね50%以上の減少)したこと、と例示されている。

なお、退職金をその額が具体的に確定した事業年度以後の事業年度に支給して、仮払金として経理した場合は、その後の事業年度に、その仮払金を損金経理により消却したとしても、その消却金額は損金算入されない。また、支払事業年度に役員退職金を損金算入する場合には損金経理が必要となるが、特に、役員退職引当金による経理処理を採用している場合は、支払に係る損金経理の処理と引当金の取崩処理を併せて行う必要がある。