2018-06-26
先日、国税庁が2017年度の査察事績を公表し、同年度は検察庁への告発件数が113件だったことが明らかになった。査察は、昨今の経済取引の広域化、国際化及びICT化等により脱税手段・方法が 複雑・巧 妙化している中で、経済社会情勢の変化に的確に対応し悪質な脱税者告発に努めている。それは、消費税事案や無申告ほ脱事案のほか、国際事案、太陽光発電関連事案など急速に市場が拡大する分野などへの積極的な取組みだ。
消費税事案については、国民の関心が極めて高いこと、また、受還付事案は、いわば国庫金の詐取ともいえる悪質性の高いものであることから、積極的に取り組まれた。2017年度の消費税事案の告発件数は27件(前年度23件)だったが、うち受還付事案は12 件(同11件)だった。また、無申告ほ脱事案の告発件数は21件(同17件)で、うち2001年度に創設された単純無申告ほ脱犯を適用した事案が8件(同6件)あった。
告発事例には、消費税の輸出免税制度を利用して不正に還付を受けていたものがある。A社は、化粧品の輸出等を行う会社だが、取引事実がないにもかかわらず、国内の業者からの架空仕入(国内の商品の仕入は消費税が課される課税取引)及び国外の業者への架空輸出売上(国外に商品を販売する際は免税取引)を計上し、消費税の申告を行うことで、不正に多額の消費税の還付を受けていた。
国際課税への取組みも重要な課題と位置付けられており、査察においても、国外取引を利用した悪質・巧妙な不正を行っている国際事案にも積極的に取り組まれた。2017年度の国際事案の告発件数は15件(前年度21件)だった。告発事例では、国外の外注先に対する外注工賃(不課税取引)を、国内の不正加担先に対する外注工賃(課税取引)に仮装して、不正に多額の消費税を免れるとともに、消費税の還付を受けていたものがあった。
また、近年の経済社会情勢に即した事案として、太陽光発電事業の市場は、再生可能エネルギー固定価格買取制度の導入で急速に拡大し、それに伴う取引に係る脱税も増加。2017年度の同関連事案の告発件数は7件(前年度10件)だった。そのほか、東日本大震災からの復興に向けた経済活動に伴う取引に係る脱税や、スーパーコンピュータの開発を行う法人の脱税など、近年の経済社会情勢に即した事案にも積極的に取り組まれた。