2018-07-04
税法上の繰延資産は、会社又は個人事業主が支出する費用でその支出の効果が1年以上に及ぶもの(資産の取得価額や前払費用を除く)をいい、会社法上の繰延資産と税法独自の繰延資産(税務上の繰延資産)に大別される。会社法上の繰延資産は、創立費、開業費、開発費、株式交付費、社債発行費等の5つである。これらの費用を繰延資産として計上した場合、その費用処理(償却)については期間を選ばなければならない。
期間について、均等償却を選んだ場合には、創立費、開業費、開発費は5年、株式交付費は3年、社債発行費は社債の償還期限内と決められている。また、これら会社法上の繰延資産については任意償却も認められている。中小企業の経営においてよくある使われ方としては、会社設立時に出た諸々の費用を創立費や開業費で繰延資産計上や、会社が安定して売上が伸びてきて、黒字が確保できるようになった時点で任意償却などがある。
一方で、税務上の繰延資産は、商店街のアーケードなどの公共的施設等の負担金、資産を貸借するための権利金等、フランチャイズ加盟などの役務提供の権利金等、広告宣伝用資産の贈与費用、自己が便益を受けるための費用などがある。これらは繰延資産としての経理処理が強制される。一時の費用にするのではなく、税法で定める償却期間を基に毎期償却していくが、例外的に20万円未満のものは支出時の費用に計上することができる。
実務において多いものに、不動産の賃貸借時に発生した礼金や権利金の処理がある。例えば、賃貸借時の礼金等は、基本的に契約期間に応じてその支出の効果の及ぶ期間にわたって償却するが、不動産業者などに支払った仲介手数料は、その支払時に損金算入できる。また、フランチャイズに対する加盟金なども近年では発生件数が増えているが、フランチャイズの加盟金は5年間での均等償却となる。
なお、繰延資産として各事業年度の損金に算入できる金額は、法人がその事業年度において償却費として損金経理した金額のうち、償却限度額に達するまでの金額となる。ここで償却限度額とは、繰延資産の額をその支出の効果の及ぶ期間、すなわち償却期間の月数で割ったものに、その事業年度の月数をかけて計算した金額をいう。事業年度の中途での支出は、支出の日から事業年度末までの月数となる。