2018-07-06
日本税理士会連合会(神津信一会長)はこのほど「2019年度税制改正に関する建議書」を公表した。同建議書は、今回の重要建議項目として、(1)消費税における単一税率及び請求書等保存方式を維持すること、(2)所得計算上の控除から基礎的な人的控除へのシフトを進めるとともに、基礎的な人的控除のあり方を見直すこと、(3)償却資産に係る固定資産税制度を抜本的に見直すこと、の3点を盛り込んだ。
(1)については、軽減税率(複数税率)制度は、区分経理等により事業者の事務負担が増加することや、逆進性対策として非効率、財政が毀損し社会保障給付の抑制が必要となるなどの理由から、日税連では、単一税率制度の維持を強く主張している。また、2023年10月に導入予定の適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス方式)への移行は、行政手続コスト削減の方向性に逆行することのないような配慮・見直しを求めている。
(2)については、基礎控除、配偶者控除等の基礎的な人的控除の課税最低限は、健康で文化的な最低限度の生活を維持するために侵害してはならない性質を有するもので、生活保護の水準に合わせていくことが望ましい。その際、給与所得控除・公的年金等控除の水準が過大なことや、控除が適用されない事業所得者等とのバランスも踏まえ、所得計算上の控除を縮減した上で、基礎的な人的控除を中心に課税最低限を確保することが適切とした。
具体的には、A.特定支出控除制度をより一層拡充し、給与所得控除額は、その構成を明らかにした上で縮減すべき、B.公的年金等控除額は、可能な限り縮減すべき、また、世代内での課税の不均衡是正のため、年齢による差異をなくすべき、C.基礎的な人的控除は、最低限度の生活維持に必要な部分は担税力を持たないとする最低生活費不課税の観点から、その額を引き上げた上で所得控除方式を維持すべき、と提案した。
(3)については、償却資産に係る固定資産税制度が事業者の設備投資の阻害要因になっていること、現状では課税客体の捕捉が不十分、固定資産台帳の整理が賦課期日と決算日の年2回必要になるなど事業者に過度な事務負担を強いていること等の問題がある。しかしながら、市町村の財政の現状からみると、代替財源がない限り同制度を廃止することは困難なため、当面は制度を維持しつつ上記問題の解決も検討する必要があるとした。
この点、賦課期日と申告期限については、賦課期日は現行法のままとしつつも、申告期限につき、現行方式と電子申告に限り法人税の申告期限と一致させる新方式との選択制を早期に実現した上で、償却資産に係る固定資産税を固定資産税とは異なる新たな税目とする、所得税の申告期限と一致させる、e-TaxとeLTAXの連携・統一で税額確定方式を申告納税方式に変更するなど、さらなる抜本的改革の検討を求めている。
同建議書は↓
http://www.nichizeiren.or.jp/wp-content/uploads/doc/nichizeiren/proposal/taxation/kengisyo-H31.pdf