建物を賃借するために支払った権利金等の取扱いは

法人が建物を借りる場合、最初に権利金又は保証金、礼金などを支払うが、権利金と保証金の違いは、一般的に退去する際に返還されるかどうかになる。権利金は返還されないものであり、保証金は基本的に返還されるが、家賃の滞納や入居者の負担で補修の必要がある場合などには、保証金から差し引かれ、残額が返還される。また保証金は入居時にあらかじめ返還されない部分が決められている場合があり、これを敷金という。

これらの権利金や敷金は返還されない費用であり、その支出の効果が1年以上に及ぶことから、繰延資産となる。ただし、不動産業者などに支払った仲介手数料については、その支払ったときに損金に算入できる。繰延資産は、その支出の及ぶ期間にわたって償却するが、各事業年度に損金算入できる金額は、法人がその事業年度に償却費として損金経理した金額のうち、償却限度額に達するまでの金額となる。

ここで償却限度額とは、繰延資産の額をその支出の効果の及ぶ期間(償却期間)の月数で割ったものに、その事業年度の月数をかけて計算した金額をいう。ただし、事業年度の中途での支出の場合は、「その事業年度の月数」は支出の日から事業年度末までの月数となる。この場合、月数は暦にしたがって計算し、1ヵ月に満たない端数は1ヵ月とする。この償却期間は、その権利金などの内容によって、次の通り定められている

(1)建物の新築に際して支払った権利金などで、その金額が建物の賃借部分の建設費の大部分に相当し、かつ、その建物が存続する間は賃借できる場合…その建物の耐用年数の10分の7に相当する年数、(2)建物の賃借に際して支払った(1)以外の権利金などで、契約や慣習などによって、明渡し時に借家権として転売できることになっている場合…その建物の賃借後の見積残存耐用年数の10分の7に相当する年数。

(3)(1)及び(2)以外の権利金などの場合…5年。ただし、契約による賃借期間が5年未満の場合で、契約を更新するときは再び権利金などの支払をすることが明らかであるときは、その賃借期間となる。なお、これらの償却期間に1年未満の端数があるときは、その端数を切り捨てる。また、繰延資産の償却費を損金算入する場合には、確定申告書に繰延資産の償却限度額その他償却費の計算に関する明細書を添付する必要がある。