短期前払費用として支払時点で損金算入できる場合

前払費用とは、法人が一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち、その事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう。前払費用は、原則として、支出した時に資産に計上し、役務の提供を受けたときに損金の額に算入すべきものだ。つまり、翌期の経費を今期の経費として繰り上げることは認められていないわけだが、例外規定として「短期前払費用」というものがある。

法人税基本通達では、「前払費用の額で、支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、その支払時点で損金の額に算入することを認める」としている。地代家賃・賃借料や保険料などで毎月支払っているものをまとめて1年分支払っても短期前払費用として全額損金算入できる。

例えば、3月決算法人が、当事者間の契約で、(1)期間40年の土地賃借に係る賃料について、毎月月末に翌月分の地代月額100万円を支払う、(2)期間20年の土地賃借に係る賃料について、毎年、地代年額(4月から翌年3月)24万円を3月末に前払いにより支払う、(3)期間2年(延長可能)のオフィスビルフロアの賃借に係る賃料を、毎月月末に翌月分の家賃月額61万円を支払う、といった支払いを継続的に行うとしているものが該当する。

しかし、利益が出たから今期だけ1年分支払うといった利益操作のための支出や、収益との対応期間のズレを放置すると課税上の弊害が生じるものを排除する必要があることから、継続的な支払いを前提条件とすることや、収入との直接的な見合関係にある費用については対象外とされる。例えば、借入金を預金や有価証券などの金融資産で運用するようなひも付きの場合の借入金の前払い利息は、短期前払費用の計上はできない。

これらに加えて、役務の受入れの開始前にその対価の支払いが行われ、その支払時から1年を超える期間を対価支払の対象期間とするような前払費用も、短期前払費用に該当しないので注意が必要だ。例えば、3月決算の企業が、期間10年の建物賃借に係る賃料について、毎年、家賃年額(4月から翌年3月)100万円を2月に前払いにより支払うといったケースが該当する。この場合は、全額を前払費用として資産計上することになる。