混同しやすい「修繕費」と「資本的支出」の区分に注意

建物や車など、所有している固定資産を修繕した場合、基本的には「修繕費」として費用を計上する。しかし、その修繕内容によっては、固定資産の「資本的支出」とみなされ、会計処理が大きく変わってくる。「修繕費」、「資本的支出」ともに経費計上できることに違いはないが、そのどちらに該当するかによって、経費計上の期間が異なってくる。経理担当者が混同しやすい「修繕費」と「資本的支出」の区分には注意が必要だ。

事業に使用している固定資産の修理や改良などのために支出した金額のうち、その固定資産の維持管理や原状回復のために要したと認められる部分の金額は、「修繕費」として損金算入が認められる。ただし、その修理や改良などが固定資産の使用可能期間を延長させたり、価値を増加させるものである場合は、修繕費とはならず、「資本的支出」として、その固定資産の取得価額に加算して減価償却の対象としなければならない。

そこで問題となるのは、「修繕費」となるかどうかの判定だが、これは修繕費や改良費などの名目によって判断するのではなく、その実質によって判断しなければならないとされている。ただし、一つの修理や改良などの金額が20万円未満の場合や、おおむね3年以内の期間を周期として行われる修理、改良などである場合は、付加価値を与える修繕であっても、その支出した金額を修繕費とすることができる。

一方、次のような支出は、原則として修繕費にはならず資本的支出となる。例えば、(1)建物の避難階段の取付けなど、物理的に付け加えた部分に係る費用の額、(2)用途変更のための模様替えなど、改造や改装に直接要した費用の額、(3)機械の部分品を特に品質又は性能の高いものに取り替えた場合の、その取替えに要した費用の額のうち通常の取替えの場合に要すると認められる費用の額を超える部分の金額などとして支出したケースである。

なお、修繕費か資本的支出か不明な場合は、(1)その支出した金額が60万円未満のとき、又はその固定資産の前期末における取得価額のおおむね10%相当額以下のときは修繕費として損金経理できる形式基準による判定や、(2)法人が継続してその支出した金額の30%相当額とその固定資産の前期末における取得価額の10%相当額とのいずれか少ない金額を修繕費とし、残額を資本的支出とする経理をしているときは、それを認める特例がある。