2019-01-15
昨年は、平成30年7月豪雨や台風第19~21号等、北海道胆振東部地震など、地域の中小企業・小規模事業者に大きな影響を与える大規模災害が頻発し、新たな課題が顕在化した。そこで、2019年度税制改正においては、サプライチェンや地域の雇用を支える中小企業を念頭に、事前対策の策定・実践など、実効性が高い事前対策の促進が不可欠との観点から、中小企業の災害に対する事前対策のための設備投資に係る税制措置が創設される。
対象者は中小企業・小規模事業者だが、取組内容や実施期間、防災・減災設備の内容等を記載した「事業継続力強化計画(仮称)」を作成し、経済産業大臣に申請・認可を受ける必要がある。対象設備は、事前対策強化に必要な防災・減災設備で、100万円以上の機械装置(自家発電機、排水ポンプ等)、30万円以上の器具備品(制震・免震ラック、衛星電話等)、60万円以上の建物附属設備(止水板、防火シャッター、排煙設備等)が該当する。
つまりは、事業者が作成した事前対策のための計画を、経済産業大臣が認定した上で、認定計画に含まれる設備の導入に対して、税制措置を適用する。税制措置は、上記の自家発電や制震・免震措置等の防災・減災設備への投資に対して、特別償却(20%)を講じる。この税制措置の創設は、中小企業等経営強化法の改正が前提となり、適用期間は同法の改正法の施行から2021年3月31日までとなる。
経済産業省では、事前対策不足による失敗例として、豪雨発生時に近隣の河川が氾濫、工場が浸水すると同時に大量の土砂が流入し、主要生産設備等が全て水没あるいは土砂に埋もれてしまい使用不能となった旋盤加工業や、震災発生時のリスクに備えて、事前に工場内の生産設備などに免震・制震対策を施していなかったため、震度5の揺れが発生した際に、設備が転倒、損壊する被害が発生した電気部品製造業などを示している。
一方で、事前の設備投資による防災・減災対策例として、災害の発生時の事業継続の対応指針、目標復旧時間などを予め策定し、通常操業の目標再開時期を実現するため、止水板、排水ポンプなどの設備を準備していた製造業や、サーバーがダウンしないよう、制震ラックを導入するとともに、地震発生時においても、最低限不可欠な電力を確保するため、サーバーが最低限稼働できる非常用発電機を導入していたデータセンタなどを例示している。