2019-02-13
本年10月からの消費税の軽減税率制度の導入に伴い、税率の異なるごとに売上及び仕入れを区分して経理する必要がある。そこで、経理体制が整っておらず、税率の異なるごとに区分して経理することが難しい中小事業者については、経過措置として、消費税額を簡便的に計算することができる売上税額の計算の特例及び仕入税額の計算の特例が認められているので留意したい。ここでは、売上税額の計算の特例を紹介する。
売上税額の計算の特例は、中小事業者のみを対象とし、本年10月1日から2023年9月30日までの期間に適用される。適用対象期間は4年なので、その間に経理体制を整え、円滑に計算するよう準備をする必要がある。税額計算の特例は、税率の異なるごとに取引を区分することが困難な中小企業者は、課税売上(税込み)に一定の割合を乗じて計算した金額を、軽減税率の対象となる課税売上(税込み)とすることができるというもの。
一定の割合とは、(1)軽減売上割合、(2)小売等軽減仕入割合で、このうち、いずれかを中小事業者の態様に応じて適用することができる。(1)の軽減売上割合とは、通常の事業を行う連続する10営業日の課税売上(税込み)のうち、軽減税率の対象となる課税売上(税込み)の占める割合をいう。通常の事業を行う連続する10営業日は、この割合により計算しようとする適用対象期間内であれば、どの時点のものを用いても問題はない。
また、(2)の小売等軽減仕入割合とは、課税仕入れのうち軽減税率の対象となる課税売上(税込み)にのみ要する課税仕入れの占める割合をいう。この割合により計算することができる中小事業者は、卸売業又は小売業を営んでおり、課税仕入れを税率ごとに区分経理でき、かつ、簡易課税制度の適用を受けていないことが要件とされる。つまり、課税仕入れについて税率ごとの区分経理ができるかどうかがポイントとなる。
なお、(1)軽減売上割合及び(2)小売等軽減仕入割合の計算が困難で、かつ、主として軽減税率対象品目を販売する中小事業者については、(1)軽減売上割合又は(2)小売等軽減仕入割合を50%とみなして計算することができる。主として軽減税率対象品目を販売する中小事業者とは、課税売上のうち軽減税率の対象となる課税売上の占める割合がおおむね50%以上である事業者とされる。
ただし、課税売上の大部分が軽減税率の対象となる課税売上だと、軽減税率の対象となる課税売上を50%で計算した場合、残りの50%が標準税率の対象となる課税売上として計算されてしまうので、税負担が重くなる。したがって、税率の異なるごとに売上を区分することが困難な事業者は、事務負担が煩雑でない限り、(1)軽減売上割合又は(2)小売等軽減仕入割合を50%とみなして適用するケースは少ないとみられている。