未婚のひとり親も個人住民税の非課税の対象に

ここ数年、税制改正を前に、厚生労働省などから、婚姻によらないで生まれた子を持つ未婚のひとり親を寡婦(寡夫)控除の対象に加えてほしいとの要望が毎年出されているが、この要望は2019年度税制改正では実現しなかった。しかし、子供の貧困に対応する観点から、収入の少ないひとり親が個人住民税の非課税措置の対象に加えられる。この改正は、2021年分以後の個人住民税から適用される。

税制改正大綱によると、児童扶養手当の支給を受けている児童の父又は母のうち、現に婚姻していない者又は配偶者の生死が明らかでない者(これらの者の前年の合計所得金額が135万円を超える場合は除く)を個人住民税の非課税措置の対象に加えるとした。この「婚姻」及び「配偶者」には、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある場合も含まれものとされる。

ひとり親も寡婦(寡夫)控除制度の対象とする見直しは今回実現しなかったが、与党の2019年度税制改正大綱における検討事項に、「婚姻によらないで生まれた子を持つひとり親に対する更なる税制上の対応の要否等について、2020年度税制改正において検討し、結論を得る」と明記された。寡婦(寡夫)控除は、税負担のみならず、その適用の有無が行政サービスの利用に差が生じ、生活上の大きな格差を生むことになる。

現行の寡婦(寡夫)控除制度は、配偶者と離婚あるいは死別し、かつ扶養親族を有するなど一定の条件の場合にしか認められておらず、非婚者は制度の対象外となっている。だが、寡婦(寡夫)控除は、税負担のみならず、公営住宅の家賃や保育料、国民健康保険料など住民サービスのさまざまな場面で所得の基礎計算に使われるため、適用の有無が生活上の大きな格差を生むことになる。

非婚のひとり親の場合は、寡婦(寡夫)控除の要件に該当しないため、同じひとり親世帯で同じ所得であっても婚姻歴の有無で行政サービスの利用に差があるのは不公平との声が高まっている。また地方自治体でも、結婚歴のないひとり親世帯でも寡婦(寡夫)控除が適用されるものとみなして所得額の計算をする「寡婦(夫)控除のみなし適用」を採用するところが増えている。今後の未婚の親に対する控除制度改革が注目される。