2019-03-15
2019年度税制改正において、自主的な適正申告を担保するため、経済取引の多様化等に伴う納税環境の整備の一環として、国税当局が事業者等に対して必要な情報を照会するための手続きが整備される。まず、「事業者等への協力要請」がある。現行実務で行われている事業者等への任意の照会について、法令上、国税当局が事業者等に対して協力を求めることができる旨が明確化される。
具体的には、国税庁等の職員は、事業者及び特別な法律により設立された法人に、国税に関する調査(犯則事件の調査を除く)に関し参考となるべき帳簿書類その他の物件の閲覧又は提供その他の協力を求めることができることを法令上明確化する。なお、査察調査などの対象となる犯則事件は、地方裁判所又は簡易裁判所の裁判官の許可を得て、臨検・捜索・差押えを、任意ではなく強制的に行うことができる。
次に、「事業者等への報告の求め」がある。これは、高額・悪質な無申告者等を特定するため特に必要な場合に限り、事業者等に対して、担保措置を伴ったより実効的な形により情報照会を行うことができることとするもの。ただし、適正かつ慎重な運用を求める観点から、照会できる場合及び照会情報を必要最小限の範囲に限定するとともに、相手方となる事業者等が不服申立てを行うことも可能とする。
照会できる場合とは、(1)多額の所得(年間1000万円超)を生じうる特定の取引の税務調査の結果、半数以上でその所得等について申告漏れが認められた場合、(2)特定の取引が違法な申告のために用いられるものと認められる場合、(3)不合理な取引形態により違法行為を推認される場合、に限定される。いずれも他の方法による照会情報の収集が困難である場合に限られる。
上記の要件を満たす場合には、その事業者等に、特定取引者の氏名又は名称、住所又は居所及び個人番号又は法人番号に限定して、60日を超えない範囲内においてその準備に通常要する日数を勘案して定める日までに、報告を求めることができることとする。「特定取引者」とは、事業者等との取引(事業者等を介して行われる取引を含む)を行う不特定の者をいう。この改正は、2020年1月1日以後に行う協力又は報告の求めについて適用される。