2019-03-26
同族会社では役員から不動産を購入するケースは少なくないが、その場合、時価の2分の1以上かつ時価以下の金額で購入した場合以外は税務上問題が生じることになる。「時価」とは、通常の取引価額をいうものだから、理論的には近隣の類似する標準値の公示価格や基準値の標準価格を参考にして適切な価額を求めるべきということになる。場合によっては、不動産鑑定士の鑑定評価による価額算定も必要になろう。
しかし、同族会社とその役員間の売買において不動産鑑定士に鑑定評価を依頼するケースは実際には少ない。一般的には、(1)路線価によるその土地の相続税評価額÷0.8=時価、(2)近隣の類似する条件の土地の標準値の公示価額×取引対象地の路線価/標準値の路線価=1平方メートル当たりの土地の時価、といった方法で時価を算定し、それが著しく不合理と認められない限りは、税務上も容認される可能性が高い。
ただし、会社が役員から土地を時価未満で購入した場合には、注意が必要となる。会社側は、時価で購入したものとみなされ、税務上はその土地の時価が資産計上され、時価と実際に支払った対価との差額が、受贈益として法人税の計算上益金算入されて課税される。また、役員側が会社に土地を譲渡する場合に、その譲渡価額が2分の1に満たない低額の場合には、時価で譲渡があったものとみなされる。
例えば、役員が時価3000万円の土地を譲渡する場合、時価の2分の1未満の1000万円で譲渡すると、会社は売買価額と時価の差額2000万円が受贈益(益金算入)となり、役員は実際の売買価額1000万円ではなく、時価の3000万円による譲渡とみなされ、譲渡所得が計算される。他方、時価の2分の1以上、時価未満の2000万円の譲渡では、会社の受贈益は1000万円、役員は実際の売買価額2000万円により譲渡所得が計算される。
さらに、会社が役員からその土地の時価よりも高い4000万円で購入するケースでは、税務上その土地の時価3000万円と実際に支払った金額との差額1000万円は、その役員に対する役員給与として扱われ、所得税の源泉徴収義務が生じるとともに、法人税の計算上は損金不算入となる。つまり、法人側で役員給与として扱われる1000万円は、役員側においても給与所得課税され、残りの時価の3000万円が、役員の譲渡所得の収入金額となる。