国税が還付されたのになぜ住民税は還付されない?

2018年分の所得税の確定申告は終了した。2000万人を超える確定申告提出枚数の半数以上を占める還付申告は、会社員にとっても馴染み深いものになってきた。ところで、還付申告をした人のなかには「どうして住民税には医療費控除がないのだろう」といった疑問を持つことが少なくない。実際に、市・区役所の住民税の窓口には「住民税でも医療費控除は受けられないのか」といった問合せがあるそうだ。

確かに、住民税も課税所得が少なくなれば、納めすぎた税金を返してもらえると考えても不思議ではない。ところが残念なことに、住民税には医療費控除といった制度はない。とはいえ、実際には、所得税で医療費控除された分はしっかり反映される。国税で医療費控除が適用されれば、当然ながら課税所得は少なくなる。その少なくなった課税所得は住民税にも反映される。

所得税は、本人の給与金額や扶養人数などを考慮して、給与等から事前に大まかな金額を源泉所得税として前払いしている。そして、年末調整や確定申告で本人が受けられる諸控除を考慮して、年間確定税額を計算する。年間確定税額が前払いしていた税金よりも少なければ、還付される。一方、住民税は、所得税とは違い、年間の所得が計算された後に翌年の6月から納付を開始する。つまり後払いなのだ。

例えば、医療費控除で40万円の所得税の還付を受けた場合、住民税では、住民税率が10%だとすると、「40万円×10%」で4万円が減少することになる。ただ、住民税では、税金を現金で戻すということをせず、また、所得税に1年遅れで課税されるため、分かりずらいのだ。一般の会社員の場合、2018年分の所得に対する住民税は、今年の6月から来年の5月まで12ヵ月にわたって特別徴収される。

したがって、上記の医療費控除で40万円の所得税の還付を受けた場合に住民税で減少した4万円も、今年の6月から来年の5月まで12ヵ月にわたって特別徴収されるなかで、ほぼ12等分した額が減額されることになるわけである。ともあれ、所得税と住民税は、一般の人にとって最も馴染みの深い税金だが、両者の関係をきちんと理解している人は意外と少ないようだ。