2019-04-18
商業施設の開発行為に伴い、洪水調整のために設置を義務付けられた調整池に供された2筆の土地の固定資産評価上の地目が「宅地」か「池沼」に当たるのかの判断が争われた事件で最高裁第三小法廷(戸倉三郎裁判長)は、本件土地は宅地に該当するとして自治体の認定を認めた名古屋高裁の判断には、固定資産の評価に関する法令の解釈適用を誤った違法があるとして、審理を同高裁に差し戻す判決を言い渡した。
この事件は、商業施設の開発業者が、市内の山林等を開発した土地上にショッピングセンターを開設するに当たって、開発行為に伴い設置が義務付けられている調整池に供する土地の評価について、自治体は地目を宅地として認定した。これに対して、土地の所有者である開発業者が、各土地の現況や利用目的に照らせば、その地目はいずれも池沼と認定されるべきであると主張して訴訟を起こしたことが発端となった。
この訴訟で名古屋高裁は、「本件各土地は、商業施設が適法に開発許可を受け、同施設が有事のための洪水調整機能を維持して安全に運営を継続するために必要なものである。したがって、本件各土地は、宅地である本件商業施設の敷地を維持するために必要な土地と認められるから、各土地の地目をいずれも宅地と認定した上で決定された各登録価格は、評価基準によって決定される価格を上回るものではなく適法」と判示した。
これに対して最高裁は、「固定資産評価基準では、地目の認定に当たって、その土地の現況及び利用目的に重点を置き、土地全体としての状況を観察して認定するものとしている」とした上で、高裁は、本件土地の1筆の面積の80%以上に常時水がたまっていることなど、本件各土地の現況等について十分に考慮することなく、本件各土地は宅地である商業施設の敷地を維持するために必要な土地であるなどと判断したと指摘。
このような高裁の判断には、「判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、本件各土地のそれぞれの現況、利用目的等に照らし、本件各登録価格が評価基準によって決定される本件各土地の価格を上回らないか否かについて更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻す」との判断を示している。
同最高裁判決の全文は↓
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/591/088591_hanrei.pdf