原発避難指示区域の相続土地評価は引き続き「0」に

国税庁は5月17日まで、「2019年中に相続等により取得した原子力発電所周辺の避難指示区域内に存する土地等の評価について」の法令解釈通達(案)のパブリックコメントを行っている。これは、2011年3月11日の東日本大震災により甚大な被害を受けた原子力発電所周辺の帰還困難区域、居住制限区域及び避難指示解除準備区域に設定されている区域内に存するものの評価を行う場合等の取扱いを定めるもので震災後、毎年公表されている。

今回公表されたパブリックコメントでは、これまで同様に設定されている原子力発電所周辺の避難指示区域内にある土地及び土地の上に存する権利の評価について、2019年中に取得した、(1)避難指示区域内の土地等の価額、(2)株式等を純資産価額方式により評価する場合における避難指示区域内の土地等の価額、についてはともに価額を「0」(評価しない)とする内容となっている。

国税局(所)では毎年、土地等の評価額の基準となる路線価及び評価倍率を定めて公開しているが、これらの避難指示区域内の土地等については、2018年分までと同様に、路線価等を定めることが困難な状況にある。その理由として、まず、自由な取引が行われるとした場合に通常成立すると認められる価額を把握することが困難又はできず、路線価等を定める環境や売買実例価額に準拠して評価する環境にないことを挙げている。

さらに、避難指示区域内の土地等については、使用収益制限などによって減価していると認められるが、その減価の程度を具体的に把握することが困難であることや、「時価」を超える評価は違法となるところ、相続税等の課税のための評価であることを考慮すると、評価の安全性を十分に考慮する必要があることを、2018年分までと同様に、路線価等を定めることが困難な状況にある理由としている。