2019-05-15
周知のように、社内慰安旅行の費用は、一定要件を満たしたものであれば企業が負担しても、従業員の経済的利益として給与課税されることはない。ところで、企業のなかには定年退職者に対し、退職金のほかに海外慰安旅行をプレゼントして永年の会社に対する貢献に報いるところもあるようだ。こうした定年退職者に対する海外慰安旅行についての課税関係はどうなるのだろうか。
この点について税務当局は、定年退職者に対する海外慰安旅行の提供については、それが永年勤続者表彰制度と同様の内容に基づくものであり、社会通念上相当と認められるものについては非課税として取り扱われ、それを上回るものについては退職所得として課税するとしている。永年勤続者に対する旅行や観劇の招待、記念品などは、対象者の勤続年数がおおむね10年以上などの一定要件を満たせば非課税となる。
永年勤続者表彰制度に基づき永年勤続者を旅行に招待した場合のその永年勤続者が受ける経済的利益については、その永年勤続者の地位や勤続期間などに照らし、社会通念上相当と認められれば課税しない。そういった趣旨からすれば、定年退職者旅行がたまたま定年退職を機会として行われるからといって退職所得として課税することは必ずしも相当ではないという理由から、定年退職者旅行も原則非課税としているわけだ。
また、永年勤続者表彰旅行については、同一人が数回旅行することもあり得るのに対し、定年退職者旅行については、定年退職という通常は生涯に1回しかない機会をとらえて旅行をするものであることを考慮すると、永年勤続者表彰旅行を非課税とし、定年退職者旅行を退職所得として課税するということはバランスを欠くといえることが、定年退職者旅行を原則非課税とするもう一つの理由でもある。
ちなみに、永年勤続者に支給する旅行や記念品等は、(1) その人の勤続年数や地位などに照らして、社会一般的にみて相当な金額以内であること、(2) 勤続年数がおおむね10年以上である人を対象としていること、(3) 同じ人を2回以上表彰する場合には、前に表彰したときからおおむね5年以上の間隔があいていること、との要件を全て満たしていれば給与として課税しなくてもよいことになっている。