2019-05-22
消費税等の会計処理方法には、(1)消費税等を売上高及び仕入高等に含めて経理する「税込経理方式」と(2) 消費税等を売上高及び仕入高等に含めないで区分して経理する「税抜経理方式」(取引のつど区分する方法と期末に一括区分する方法)の二通りの選択肢がある。どちらを採用するかは事業者の任意であり、納付する消費税等の合計額は同額となる。ただし、免税事業者は「税込経理方式」が求められる。
「税込経理方式」は、売上や仕入等に係る消費税額等は売上金額や資産の取得価額、経費等の金額に含まれるため、企業の損益は消費税等によって影響されるが、税抜計算の手数が省ける。売上に係る消費税額等は売上に含めて収益として、仕入等に係る消費税額等は仕入金額や資産の取得価額、経費等の金額に含めて計上する。納付税額は、租税公課として損金(必要経費)に、還付税額は、雑収入として益金(収入金額)に算入する。
一方、「税抜経理方式」では、売上や仕入等に係る消費税額等は、仮受消費税等又は仮払消費税等とされ、企業を通り過ぎるだけの税金に過ぎないため、企業の損益は消費税等によって影響を受けないが、税抜計算の手数が増える。納付税額は、仮受消費税等から仮払消費税等を控除した金額を支出とし、また、還付税額は、仮払消費税等から仮受消費税等を控除した金額を入金とし、ともに損益には関係させない。
しかし、例えば、課税期間の課税売上高が5億円以下で課税売上割合が95%以上の事業者が収益に係る取引、固定資産に係る取引については税抜経理方式、経費などの支出に係る取引については税込経理方式を選択適用して、簡易課税制度の適用をしない場合には、仮受消費税等の合計額から仮払消費税等の合計額を差し引いた金額と納付すべき税額又は還付されるべき税額は一致しない。
これは、経費などについて税込経理して、経費などに含まれる消費税等を仮払消費税等としなかったためだ。このため、税抜経理方式と税込経理方式の併用により生じた、仮受消費税等の合計額から仮払消費税等の合計額を差し引いた金額と納付すべき消費税等の額又は還付されるべき消費税等の額との差額は、個人事業者は、その課税期間を含む年の総収入金額に算入し、法人は、その課税期間を含む事業年度の益金の額に算入する。
また、簡易課税制度を適用している場合でも、税抜経理方式を採用することがまれにある。簡易課税の場合、売上にかかる消費税から、その消費税に対し業種ごとのみなし仕入率を乗じて計算した金額を控除して、納付すべき消費税額を計算する。そのため、「仮受消費税等」から「仮払消費税等」を控除した金額と納付すべき消費税等との間に差額が生じる。この差額については、その課税期間を含む年度の経費(収入)となる。