2019-05-24
自家消費とは家事消費ともいい、自分の店で売っている商品を自宅で使用したり、自分の畑で作った農作物を自宅で食べたりすることなどをいう。例えば、魚屋が売れ残った刺身を家族の晩御飯のおかずにしたり、八百屋が売れ残った白菜やナスなどを晩御飯で食べたりするなど、例を挙げればきりがない。要するに、棚卸商品である自分のお店の商品を、自宅で消費したり家族や知人に譲ったりした場合、自家消費として扱われる。
さて、棚卸資産を自家消費した場合、所得税基本通達の取扱いによると、通常の販売価格の70%相当額(仕入価額以上)を記帳の上、同額を事業所得の計算上総収入金額に算入し、所得税の確定申告をしなければならない。そこで注意しなければいけないのは消費税の取扱いである。というのも、多くの人が、消費税においても、所得税と同様に、その70%相当額を課税売上としなければならないと誤解しているからだ。
消費税法基本通達10-1-18《自家消費等の場合の対価》においては、棚卸資産を家事消費した場合、その棚卸資産の仕入価額以上の金額、かつ、通常他に販売する価額の50%相当金額以上の金額を課税売上として消費税の確定申告をすることを認めている。また、資産の譲渡等を行った場合において、課税期間の末日までにその対価の額が確定していないときは、同日の現況によりその金額を適正に見積もるとしている(同10-1-20)。
したがって、棚卸資産を自家消費した場合は、所得税において、通常の販売価額の70%相当額(仕入価額以上)を事業所得の計算上総収入金額に算入し、消費税において、通常の販売価額の50%相当額かつ仕入価額以上の金額を課税売上とし、それぞれ確定申告をすることができるわけだ。所得税は70%相当額だから、消費税も同様と一見考えがちだが、20%多く課税売上としているケースが多いとのこと。要注意だ。
消費税法では、「個人事業者が棚卸資産や事業の用に供している資産を、家事のために消費し、使用した場合」には、“みなし譲渡”として、消費税が課されることになっている。本来は譲渡ではないから、税法上これを譲渡と「みなす」わけだ。なお、「役務の提供」は自家消費とはならない。例えば、美容師が自分の子供の散髪を行った場合などは、自家消費とは異なり、課税対象とはならないので留意したい。