元号変更に伴うシステム修正、機能維持なら「修繕費」

「平成」から「令和」への元号変更に伴うシステム修正については、修正への切替え準備期間があったことから大きなトラブルは起きなかったようだが、経理担当者として気にかかるのは、この経費の税務処理である。このようなケースでは、「資本的支出」か「修繕費」のどちらかで処理することとなるが、国税当局からはこれといった見解は出されていないことから、これまでの取扱いから類推することになる。

そこで、思い出されるものに、システム修正費用について「修繕費か資本的支出か」が問題になった「コンピュータの西暦2000年問題」がある。これは当時、年号を西暦の下二ケタで管理していた一部のコンピュータにおいて、2000年代を迎えた際に、「00」と入力すると1900年なのか2000年なのか区別できなくなり、コンピュータが誤作動して予想外の重要なトラブルが起きるのではと危惧された問題だ。

この年号管理を二ケタから四ケタへ修正するといった機能上の障害を除去するための費用の取扱いについて、国税庁は、(1)修正の内容が、システムの効用を維持するために行うもの、(2)その修正の実態が、資産に対する修繕と認められるもの、(3)その修正内容について、それ以外の機能の付加を行うものでないことが明確、との条件を全て満たすのであれば、そのシステム修正のための支出費用は「修繕費」とする取扱いを決定したそうだ。

この取扱いは基本的に、法人税基本通達7-8-6の2(ソフトウエアに係る資本的支出と修繕費)の考え方に沿ったものとなっている。具体的には、「修正等が、プログラムの機能上の障害の除去、現状の効用の維持等に該当するときはその修正等に要した費用は修繕費に該当し、新たな機能の追加、機能の向上等に該当するときは資本的支出に該当する」ことになっている。

したがって、今回の元号変更に伴うシステム修正費用についても、必要に迫られた修正であること等も併せて考えれば、2000年問題対応費用や過去の消費税率引上げの際に要した修正費用等の場合と同様に、“現状の機能と価値の維持のための修正”であれば「修繕費」に該当する。ただし、この際に新たな機能の追加や、修正により機能の向上等を行った場合は、その部分を「資本的支出」として処理することとなる。