特定美術品についての相続税の納税猶予制度のあらましを公表

国税庁はこのほど、「特定の美術品についての相続税の納税猶予及び免除のあらまし」を公表した。これは文化的価値を有するものを活用しやすくする文化財保護法の改正を前提に、2019年度税制改正で創設された「特定美術品についての相続税の納税猶予及び免除制度」の施行を受けたもの。同制度は、文化財保護法の改正法施行日である2019年4月1日以降に、相続又は遺贈により取得をする特定美術品に係る相続税について適用される。

この特定美術品に係る相続税の納税猶予制度は、寄託先美術館の設置者と特定美術品の寄託契約を締結し、一定の活用計画に基づきその特定美術品を寄託していた者 (被相続人)から相続又は遺贈によりその特定美術品を取得した一定の相続人(寄託相続人)が、寄託を継続する場合には、その特定美術品に係る課税価格の80%相当の相続税の納税が猶予され、寄託相続人の死亡等により、納税が猶予されている相続税の納付が免除される。

寄託相続人が死亡した場合は、猶予税額が免除されるが、(1)特定美術品の譲渡をした場合、(2)特定美術品が滅失をし、又は寄託先美術館において亡失等をした場合、(3)寄託契約の契約期間が終了した場合又は認定保存活用計画の期間満了後新たな認定を受けなかった場合、(4)寄託先美術館の登録が抹消された場合などには、猶予税額及び法定申告期限からの期間に係る利子税を納付しなければならない。

上記の「寄託先美術館」とは、博物館法に規定する博物館又は同法の規定に基づき博物館に相当する施設として指定された施設をいう。また、「寄託契約」とは、特定美術品の所有者と寄託先美術館の設置者との間で締結された特定美術品の寄託に関する契約で、契約期間、特定 美術品を適切に公開する旨、所有者から解約の申入れ(一定のものを除く)をすることができない旨の記載があるものをいう。

文化財に指定されている美術品の中には美術館だけでなく個人が所有するものもあるが、相続税負担が大きいことから、相続をきっかけに売りに出されて行方不明になったり、海外流出するなどして次世代に引き継がれないことが懸念されている。特定美術品に係る相続税の納税猶予制度は、こうした散逸や流出を防ぎ、美術品の保存・活用や次世代への確実な継承のために、個人が所有する美術品について美術館へ寄託することを促している。

この件の詳細は↓
http://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku/pdf/bijutsuhin_uyo.pdf