2019-06-07
日本総研が発表した「世帯タイプ別にみた消費増税の影響」と題したレポートによると、本年10月に実施が予定されている消費増税に際しては、軽減税率導入を始めとした手厚い負担軽減策が講じられることから、世帯当たりのネットの負担増は、前回2014年の消費増税時には、一世帯当たり年15万円にものぼったが、今回は、年3万円程度に抑えられるとの見込みを示した。もっとも、負担軽減策の効果は世帯タイプで大きく異なるという。
対策効果により最も負担軽減額が大きくなるのは、子どもがいる世帯を含む「二人以上の勤労者世帯」。これは、幼児教育と高等教育の2つの無償化政策の効果が大きいため。年収500万円~1000万円の世帯では、幼児教育無償化の効果が大きい。また、低所得世帯では、もともと保育料負担が低く幼児教育無償化の恩恵は小さい一方、高等教育無償化の効果が大きくなる。他方、年金世帯と単身勤労者世帯では、負担軽減効果は限定的である。
所得比でみたネットの負担増減も世帯間でバラツキが現れる見通し。年収1000万円未満の中低所得の二人以上の勤労者世帯では、負担軽減額が消費増税額を上回り、ネットで受取超となる。所得が低い世帯ほどプラス影響が大きくなり、二人以上勤労者世帯だけをみれば、「逆進性」も緩和される。しかし、年金世帯、単身勤労者世帯では負担超となる。今回の消費増税による負担増は、こうした年金・単身勤労者世帯に集中する形という。
こうした世帯間の所得増減の違いは、消費市場にも影響を及ぼすとみている。可処分所得が増える年収250万円前後の二人以上の勤労者世帯では、増税後に消費が拡大する可能性が高い。自動車関連、衣類、教育などといった品目を中心に需要拡大が予想される。一般に、所得増加で家計に余裕ができた場合、光熱費などの必需的な支出はさほど増えないものの、選択的支出は支出が大きく伸びる傾向がある。
一方、可処分所得が減少する年金世帯と単身勤労者世帯では、嗜好性の高い品目を中心に消費が下押しされることが懸念される。以上のことから、企業サイドからみれば、今回の消費増税に際しては、消費増税下でも売上拡大が期待できる、ネット受取超となる子育て世帯の特需獲得、ネット負担増となる年金・単身勤労者世帯の支出抑制の両面で対策を講じることが重要となるとレポートは指摘している。
同レポートは↓
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/researchfocus/pdf/11118.pdf