2019-06-21
先日、国税庁が2018年度の査察事績を公表し、同年度は検察庁への告発件数が121件だったことが明らかになった。査察は、昨今の経済取引の広域化、国際化及びICT化等により脱税手段・方法が 複雑・巧 妙化している中で、経済社会情勢の変化に的確に対応し悪質な脱税者告発に努めている。それは、消費税事案や無申告ほ脱事案、国際事案のほか、急速に市場が拡大する分野などへの積極的な取組みだ。
消費税事案については、国民の関心が極めて高いこと、また、受還付事案は、いわば国庫金の詐取ともいえる悪質性の高いものであることから、積極的に取り組まれた。2018年度の消費税事案の告発件数は41件(前年度27件)だったが、うち受還付事案は16 件(同12件)と過去5年で最多だった。また、無申告ほ脱事案の告発件数は18件(同21件)で、うち2001年度に創設された単純無申告ほ脱犯を適用した事案が10件(同8件)あった。
告発事例には、消費税の免税店(輸出物品販売場)制度を悪用して不正に還付を受けていたものがある。A社は、高額な腕時計の仕入れを装い架空仕入(課税取引)を計上するとともに、その商品を輸出物品販売場の許可を受けた免税店で外国人旅行者に販売したように装い架空売上(免税取引)を計上する方法により、多額の消費税還付金額を記載した内容虚偽の消費税の確定申告を行い、不正に消費税の還付を受けようとした。
また、2011年に創設された消費税不正受還付の「未遂犯」は、2018年度には、過去最多の8件、不正還付(未遂)総額約15億円を告発。例えば、B社は、高級腕時計を代表者から仕入れたとする虚偽の納品書を作成し架空仕入(課税取引)を計上する一方、香港でのオークション販売を装い架空輸出売上(免税取引)を計上して、多額の消費税還付金額を記載した内容虚偽の消費税の確定申告を行い、不正に消費税の還付を受けようとした
国際課税への取組みも重要な課題であり、査察においても、国外取引を利用した悪質・巧妙な不正を行っている国際事案にも積極的に取り組まれた。2018年度の国際事案の告発件数は20件(前年度15件)。告発事例では、C社は、香港法人の代表者に虚偽のインボイスを発行させ架空仕入を計上して法人税を免れたほか、その不正資金から簿外の役員報酬を国外で支給し、同報酬に係る源泉所得税を一切徴収せずに不納付だったものがある。