2018年度物納申請は99件で2年ぶり増加も低水準

国の税金は金銭による納付が原則だが、相続税は、財産課税という性格上、延納によっても金銭納付が難しい理由がある場合は、一定の相続財産による物納が認められている。国税庁がまとめた2018年度相続税の物納申請状況等によると、今年3月までの1年間の物納申請件数は99件で前年度から31件増、金額は大口事案もあり324億円と前年度の26億円を大きく上回った。件数、金額ともに2年ぶりの増加だが、低水準が続く。

物納申請件数は、バブル崩壊後の1990年度以降、地価の下落や土地取引の停滞などを反映して著しく増加した。それまで年間400~500件程度に過ぎなかったものが、バブル期の地価急騰及びその後の地価急落で、路線価が地価を上回る逆転現象が起こり、土地取引の減少から土地を売ろうにも売れず、1990年度に1238件、1991年度に3871件、そして1992年度には1万2千件台まで急増した。

しかしその後は、事前に相続税額を試算して納税準備をするなど相続開始前から納税対策を行う納税者が増えたことなどから、1999年度以降は年々減少している。2018年度は2年ぶりの増加となったが、ここ10年間は1989年度(515件)以来の1千件割れが続いている。2018年度の申請件数はピーク時1992年度(1万2778件)のわずか0.01%、金額でも同じくピーク時1992年度(1兆5645億円)の0.02%にまで減少している。

一方、処理状況をみると、前年度からの処理未済を含め前年度から12件減の75件、金額では同38億円増の301億円を処理した。年度末での処理未済件数は同24件増の58件、金額では同24億円増の47億円に増加。処理の内訳は、全体の約63%の47件が許可されて財務局へ引き渡されたほか、物納財産として不適格として12件が却下、残りの16件は納税者自らが物納申請を取り下げている。

なお、2018年度の相続税の延納申請は前年度比4.1%減の1289件、同19.9%増の579億円。処理状況をみると、前年度からの処理未済を含め同8.4%減の1257件、同9.4%増の488億円を処理した。年度末の処理未済件数は同8.0%増の431件、同44.2%増の297億円に増加。処理の内訳は、全体の約71%の890件が許可され、延納不適格として47件が却下、残りの320件は納税者自らが延納申請を取り下げている。