2019-08-02
個人事業者が、自ら代表者を務める法人に支払った外注費名目の業務委託費用が事業所得の計算上、必要経費に算入すべきか否かの判断が争われた事件で大阪地裁(山田明裁判長)は、社会通念上、個人事業の業務の遂行上必要な費用であるとはいえず、必要経費該当性の判断基準における必要性要件も欠くものと認められることから必要経費には該当しないと判断して、納税者側の請求を棄却した。
この事件は、LPガス、A重油、灯油等の燃料小売業を営む個人事業者が、自らが代表者を務める法人に業務を委託したとして、それに係る外注費名目の金員を事業所得の計算上、必要経費に算入して申告したのが発端。これに対して原処分庁が、外注費の必要経費算入を否認、所得税の更正及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、納税者側が更正処分のうち申告額を超える部分及び賦課決定処分の取消しを求めて提訴したという事案だ。
つまり納税者側は、この取引に基づく外注費の支払いは先代の事業主の頃から行われているものであり、現行の事業主が先代から事業を承継した後もそれまでの状況が維持されていたにすぎないから、外注費の必要経費該当性が否定される理由はないはずであると主張して、原処分の取消しを求めたわけだ。
判決はまず、必要経費該当性の判断基準等に触れ、その支出が事業所得を生ずべき業務と合理的な関連性を有し(関連性要件)、かつ業務の遂行上必要であること(必要性要件)を要するのが相当であると指摘した。
その上で、事業を承継するまでの経緯、承継後の経緯、さらに争いとなった期間に関する事情等の事実認定を行った結果、個人事業主側が法人に対して配達販売を委託し、法人がこれを遂行し、個人事業主から法人に対して外注費が支払われたという形式及び外観が存在するものの、その実質は、個人事業主が自ら個人商店の事業主としてその業務を遂行する一方で、委託取引の取決めに基づく取扱いを継続することによって、本来支払う必要のない事業主自身の労務の対価(報酬)を、外注配達費や人夫派遣費という名目で外注費として法人に支払っていたと云わざるを得ないという判断を示した。
その結果、この事件における外注費は、社会通念上、個人商店の業務の遂行上必要であるとはいえず、必要経費該当性の判断基準における必要性要件を欠くものと認められることから事業所得に係る必要経費には該当しないと判示して、棄却した。 (2018.04.19大坂地裁判決、平成27年(行ウ)第393号)