2019-08-21
取引先企業に対する売掛金その他の債権について貸倒れが生じることは少なくない。法人税法上、法人の有する金銭債権や売掛金債権について、一定の事実が発生した場合には、貸倒れとして損金算入できる。また、消費税法上においても、課税事業者が課税資産の譲渡等を行って、その売掛債権について一定の貸倒れが生じた場合には、その貸倒れが生じた日の属する課税期間の売上に対する消費税額から控除できる。
税法上、貸倒損失が認められる事実は、法人税法上、消費税法上ともに同様である。それは、(1)債権の全部又は一部が民事再生法などの法的手続きにより切り捨てられた場合(法律上の貸倒れ)、(2)債権の全額が債務者の資産状況、支払能力等からみて回収不能となった場合(事実上の貸倒れ)、(3)債務者との取引停止後、1年以上経過した場合等(形式上の貸倒れ)、のいずれかに該当すれば貸倒損失が認められることとされている。
法人税法上は、貸倒れが生じた金額を損金算入、消費税法上は、貸倒れが生じた課税期間の課税標準額に対する消費税額から貸倒れに係る消費税額を控除できる。例えば、売掛金42万円(税込み)について貸倒れが生じた場合、「42万円×6.3/108=2万4500円」を貸倒れが生じた課税期間の課税標準に係る消費税額から控除できる(計算において1円未満の端数が生じた場合は切り捨てる)。
仮に、翌課税期間において売掛金を回収できた場合には、回収金額に係る消費税額をその課税期間の課税標準に係る消費税額に加算することになる。貸倒れに係る消費税額の控除の適用を受けるためには、貸倒れのあった事実を証する書類(民事再生法に基づく再生計画認可の書類など、客観的に貸倒れが生じたことが分かる書類等)を、課税期間の末日の翌日から2ヵ月を経過した日から7年間保存しておかなければならない。
なお、売掛債権ではなく、金銭の貸付債権について貸倒れが生じた場合、法人税上では損金算入の対象になるが、消費税法上では、金銭の貸付は不課税取引となるため、金銭債権について貸倒れが生じたとしても、貸倒れに係る消費税額の控除の対象とはならない。また、課税事業者が、免税事業者だった課税期間に係る売掛金等について、貸倒れが生じた場合は、消費税額の控除の対象とはならないので注意したい。