2018年度の滞納整理の訴訟提起は151件~国税庁

国税庁が先日公表した2018年度租税滞納状況によると、新規発生滞納の抑制及び滞納整理の促進により、今年3月末時点の滞納残高は前年度に比べて4.8%減の8118億円と20年連続で減少した。同庁では、処理の進展が図られない滞納案件については、差押債権取立訴訟や詐害行為取消訴訟といった国が原告となる訴訟を提起したり、滞納処分免脱罪による告発を活用して、積極的に滞納整理に取り組んでいる。

原告訴訟に関しては、2018年度は151件の訴訟を提起。訴訟の内訳は、「供託金取立等」13件、「差押債権取立」11件、「その他(債権届出など)」122件のほか、特に悪質な事案で用いられる「名義変更・詐害行為」が5件。また、財産の隠ぺいなどにより滞納処分の執行を免れようとする悪質な滞納者に対しては、「滞納処分免脱罪」の告発を行うなど、特に厳正に対処。2018年度は、過去最高の12件(29人員)を告発している。

悪質な滞納事例をみると、取引先への売掛金を、代表者の娘名義等の預金口座に振り込ませて隠ぺいしていたことから、滞納会社及びその代表者を滞納処分免脱税で告発した事例がある。建設業を営む滞納会社は、法人税等の滞納を発生させて以来、具体的な納付計画を提示することもなく滞納国税を累積させていたことから、徴収職員は、滞納会社が取引先に対して有する売掛債権を差し押さえた。

その後も滞納会社の財産調査を継続したところ、滞納会社の代表者は、再び差押えが行われることを懸念し、他の取引先に、売掛金の振込先を代表者の娘や関連会社名義の預金口座に変更することを依頼し、その結果、売掛金計約2000万円が、その預金口座に振り込まれた事実を把握。この行為が滞納処分の執行を免れる目的でされた財産の隠ぺいに該当すると判断し、滞納会社及びその代表者を国税徴収法違反(滞納処分免脱税)で告発している。

なお、上記の「詐害行為取消訴訟」は、国が、滞納者と第三者との間における債権者(国)を害する法律行為の効力を否定して、滞納者から離脱した財産をその第三者から取り戻して滞納者に復帰させるために行うもの。また、「名義変更訴訟」は、国税債権者である国が、国税債務者である滞納者に代わって、滞納者に帰属しながら滞納者の名義となっていない財産の名義を滞納者名義とすることを求めて提起するものだ。