2020-02-21
事業用ビルに事務所を構えると通常すべての部屋が事務所用として貸し出されているが、なかには居住用マンションで事務所可の物件などがあり、居住用のマンションを借りて事務所として使用した場合の消費税の取扱いには注意が必要だ。その家賃は課税取引として仕入税額控除することができるのだろうか。この場合は、契約当事者間で住宅以外の用途に変更した旨の契約変更を交わしているかで判断することになる。
消費税法において、住宅の貸付けが非課税となるのは、契約において人の居住の用に使用することが明らかにされている場合に限られている。居住用と定められた契約のまま、事務所等の居住用以外の用途に使用していたとしても、契約で用途変更しない限り仕入税額控除の対象とすることができない。つまり、居住用として契約している場合は、課税取引にならないのだ。
契約当事者間で居住用として使用するものとして契約をしていても、借りている側が実際に事務所として使用している場合は、実体に基づいて課税するという原則から、その家賃は課税仕入に該当し仕入税額控除ができると考えても無理はない。しかし、これは住宅の貸付を非課税とする法令の関する消費税基本通達に明記されているので、これに反する取扱いをした場合は、税務調査等で指摘されてしまう。
そのようにならないためにも、用途変更した場合には、契約で使用目的を明らかにしておく必要がある。家賃を仕入税額控除の対象にするためには、契約変更が必須となる。ただし、注意したいのは、一般的に用途変更に応じない貸主も多いし、用途を変更するという合意のないまま借主が勝手に用途を変更したことが明らかになってしまえば、契約違反による退去を求められる可能性もあるということだ。
さらに、家賃を支払う側で仕入税額控除を行うということは、受け取る側が消費税の課税事業者であれば、その消費税納税額が増えるということになり、当然、家賃の金額を消費税分値上げされる可能性が高くなる。そのようなリスクがあるので、居住用のマンションを事業用として契約変更しようとするときは、仕入税額控除だけに捉われず慎重に判断する必要があるだろう。